黄巾の章
第22話 「……ご主人様って言うな」
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義勇軍はもう戦えない。
それを鼓舞して指揮をするべき盾二様も目覚めない。
これじゃ……これじゃぁ、何のために。
何のために……
「教えてください……盾二様。私は……私は、どうしたらいいんですか……?」
あなたの臣として、私がするべきことはなんですか……?
「教えてください……ご主人、さま……」
私が俯く地面に、ぽたっと雫が落ちる。
気がつくと……私は泣いていた。
「ご主人様がいなくなったら……私は……私達は……」
私も……雛里ちゃんも。
盾二様に誓ったあの日の誓い。
『よろしくお願いします、ご主人様!』
『やめてくれ! ご主人様とは呼ぶな! 名前で呼んでくれ、頼む!』
私達の誓いに、困惑しながらも微笑み、温かく迎えてくれた。
私達の……ご主人様。
「起きてください……目を覚ましてください……私を撫でてください……触ってください……」
眠ったままの盾二様……その手を布団から出して握り締める。
その手は暖かいけど……握り返してはくれない。
「もっと褒めてください……叱ってください……どうか、どうか起きて……」
私はその手に縋りつく。
「ご主人、さま……」
「……ご主人様って言うな」
「!!」
私は、ハッとして眼を開ける。
いま……今、確かに。
「……そう言ったはずだぞ、朱里」
その言葉は幻ではなく。
盾二様はゆっくりと……眼を開けて――
微笑んでくれました。
「ご、ごしゅ……じゅんじ、さま……?」
「……? どうした、朱里。なんで泣いて……?」
「じゅんじさまぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「うおっ!?」
私は盾二様の顔に飛びつきました。
「盾二様、盾二様、盾二さま、じゅんじざまぁぁぁぁぁぁ……」
「ぐっ、ぐるっ……? い、いや、しゅ、しゅりさん? ちょっ、くび、くびが……」
ふええええええええええええええええぇん!
―― 盾二 side ――
「ぐじゅっ、ぐじゅっ、じゅんじ、ざまぁっ……ふぇ、ふぇぇぇぇぇぇん!」
「な、なんだ。ぐふっ……どうしたんだ?」
眼を開けたら、いきなり泣かれました。
どういう状況だ、これは。
俺は泣きながらしがみつく朱里を抱え、腹筋と背筋を総動員して身体を起こす。
ちと首が苦しいが……まあ、そこは我慢だ。
「よ、よしよし……なんだかわかんないけど、まあ泣きたいだけ泣けばいいさ……」
そう言って、朱里の頭を撫でる。
と――
ガタッ!
「うん?」
顔をあげると、そこには……帽子を床に落とした雛里が、
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