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魔笛
第一幕その三

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第一幕その三

「おいらも大儲けができるな」
「大儲けって?」
「いや、鳥を売ってね」
 すっかり自分の話になっていた。
「それでね」
「君は商人なのかい?」
「さて」
 そう問われるとだった。首を傾げさせるのだった。
「それはどうかな」
「どうかなって君はわからないのかい」
「いや、どうやって生まれてきたのか自分でもわからないんだよ」
「御両親も何もかい?」
「そう、何もだよ」
 こう答えるのだった。
「わからないね」
「そうなのか」
「けれどそれがどうしたんだい?」
「いや、変わってるなって思ってね」
 こう素直に己の考えを述べるタミーノだった。
「この国の名前は」
「エジプトだよ」
 それがこの国の名前だというのだ。
「丁度この国の入り口だね」
「そうか。エジプトというのか」
「あんたの国の名前は?」
「日本だよ」
 その国から来たというのだ。
「そこから来たんだけれどね」
「日本ねえ」
「知ってるかい?」
「いや、悪いけれどね」
 今度は彼が首を横に振った。
「聞いたことのない国だね」
「そうなんだ」
「森も山も越えた向こうにあるんだ」
 それがかなり異様だというのだ。
「それはまた」
「まあ遠くではあるけれどね」
「少しだけ納得できたよ」
「それで君は?」
「またおいらのことかい」
「うん、そうだけれど」
 こう彼に話すのだった。
「君はどうやって生きてるんだい」
「生きているか、かい」
「うん、どうやって」
「皆と同じだよ」
 彼は素っ気無く答えた。
「皆とね」
「というと?」
「だからさ。飲んだり食ったりして」
「それじゃあ人間なのは間違いないんだね」
「そうさ。ものとものを交換してね」
 そうしてというのだ。
「星を煌かせた女王様とお付きの御婦人方においらが色々な鳥を捕って差し上げる」
「それが君の糧になるんだね」
「その通りだよ。そうして食べ物と飲み物を貰ってるんだ」
「成程」
「そういうことだよ」
「星を煌かせた女王か」
 タミーノはその存在の名前を聞いて少し俯いて考える顔になった。
「その人に会ったことはあるのかい?」
「いや、おいらはそれはないね」
「ないのかい」
「凄く偉い人だからね。おいらなんかが会うことはね」
「けれど君は女王を知っている」
「ああ、そうだよ」
 そのことは認めるのだった。
「けれどそれがどうしたんだい?」
「いや、それだよ」
「それ?」
「君は伝説の夜の女王を知っている」
 その存在は伝説だというのである。
「間違いなく」
「何かおかしいな」
 彼はそんなタミーノの目を見て怪訝な顔になった。

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