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SAO−銀ノ月−
第五十二話
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けて全力で接近する――刺さっていた日本刀《銀ノ月》を持って。

 天空からの友切包丁はただの囮であり、俺の狙いは最初から全て愛剣を奪い返して絶対防御を突破するのみ。
そして遂に辿り着いたヒースクリフの零距離に、俺は日本刀《銀ノ月》を構えた。

「この距離なら……この距離なら防御は出来ないな!」

 ヒースクリフの大盾は友切包丁とクナイの防御のせいで上を向いており、十字剣は真剣白刃取りの影響で俺の背後にある。

 日本刀《銀ノ月》の一撃を防げやしない……!

「……むん!」

 しかし最強のプレイヤーの名は伊達ではなく、十字剣が俺の背後から、ヒースクリフ自身もろとも切りかからんとする勢いで迫り来る。
ヒースクリフには鎧があるから少しは耐えきれるだろうが、所詮コート程度の自分では、間違いなく絶命するだろう威力。

 俺が切り裂かれるかヒースクリフにトドメを刺すか……

「ナイスな展開じゃないか……って言いたいところだがな!」

 その戦いをすれば十中八九負けるのは俺で、良くても引き分けにしかならないだろう。

 それじゃダメだ……絶対に俺は生き残らなければいけないのだから。
捨て身の攻撃をするのは最期の手段で、PoHに一度やって敗北して俺は死んでいるのだから。

 そうだろう、リズ……!

「これしか……ない!」

 左手で背後から迫る十字剣を素手で掴み取り、手を傷だらけにする代わりにその動きを止める。

「ぐああぁぁっ……! だが……くらぇぇぇぇ!」

 右手の日本刀《銀ノ月》の一閃――その剣戟がヒースクリフの大盾を持った腕を切り裂き、ヒースクリフはその手ごと自慢の大盾を取り落とした。

「くっ……!」

「てええい!」

 距離を離さんとヒースクリフと同時に蹴りを放ち、その衝撃で双方とも思惑通りに吹っ飛んでいく。

 ヒースクリフにはもう大盾はなく、あるのは俺の鮮血に濡れた十字剣。

 対する俺も……十字剣を握って無理やり受け止めた左手は、もう何かを握れるような状態ではなかったが。

 ……本番はそう、ここからだ……!

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