第二幕その十
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第二幕その十
「そなたへの試練だ」
「私への」
「わかったな」
確かな、それと共に優しい声を娘にかけた。
「それで」
「はい」
そしてだった。パミーナも遂に頷いたのだった。
そうしてだ。タミーノはここで言った。
「では僕は」
「行かれるのですか?」
「試練を乗り越える」
パミーナに対して告げた。
「何があろうとも」
「行くがいい若者よ」
ザラストロは今度はタミーノに優しく確かな声をかけた。彼の後ろには僧侶達が並んで立ったままである。その中での言葉であった。
「再び」
「はい」
ザラストロのその言葉にこくりと頷いてみせた。
「今から」
「ではタミーノ」
パミーナは悲しみそのものの顔で彼に言った。
「これで」
「必ず帰って来る」
「それでは」
こうしてであった。二人は別れた。そのうえで二人は見詰め合ってであった。
「黄金の平安よ」
「また再び」
二人は別れタミーノも試練に向かう。パミーナはザラストロにまた何処かに導かれていく。彼女もまた試練の中にいるのだった。
そしてパパゲーノはだ。一人でピラミッドの中で騒いでいた。
「おいら一人かな。ねえタミーノさん」
周りを見回しながらタミーノを探している。
「いないんですか?おいら一人だけですか?」
「全く。困った奴だ」
その彼のところにだ。一人の僧侶が呆れた顔で出て来たのである。
「試練をする気がなかったのか」
「おいらはこのままじゃ餓え死にだ。こんなところにずっといたくないんですがね」
「餓え死にどころかだ」
僧侶はパパゲーノの前に来て言うのであった。
「御前は暗い大地の割れ目の中を永遠に彷徨い歩いて然るべきなのだぞ」
「そんなところにですか」
「そうだ。試練はいいのだな」
「そんなのどうでもいいですよ」
見事なまでの本音だった。
「そんなことは」
「情け深い神々が御前のその不心得を免じて下さる」
「それはどうも」
「その代わりにだ」
僧侶の言葉は厳しい。
「御前は神々に仕える者の貴い満足を味わうことは決してない」
「だからそんなのはどうでもいいですよ」
本当にそんなことには興味のないパパゲーノだった。
「おいらは美味い酒でもあれば」
「それでいいのか」
「ええ、それだけで」
いいというのである。
「構いませんよ」
「他にはいらないのか?」
「ええ、別に」
こう僧侶に答える。
「ないですよ」
「では望みを適えてやろう」
「そりゃどうも。しかし」
「しかし?」
「いえですね」
ここでさらに話すパパゲーノだった。何かを思い出した顔になってである。
「お酒を貰えるとなって嬉しいんですけれど」
「どうしたのだ?」
「何かを思い出したんですよ」
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