病み六花の自己中が解放される時・後編
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の心臓の音が聞こえている、
(マナ……)
そのまま六花は唇をマナへ押し当てた。
柔らかい。
ふわりとした肉の触感を味わい尽くす。
(マナ、大好き)
舌を差し込むと、マナの口はそれを優しく受け入れる。
二つの舌がねちっこく絡み合い、唇のあいだから唾液が糸を引いた。
「六花。もう二度とあんな思いはさせないからね」
「私こそゴメンね。こんなことでもしないと、私……」
「大丈夫だよ、六花。私だって、あのまま仲直りできないで終わるなんて、絶対に嫌だと思ってた」
「うん。もう怒ってない。ありがとね、マナ」
「大好きだよ? 六花。これからはもっともっと仲良くしようね」
こんな事をした自分に大して、マナは太陽のように明るい笑顔を向けてくれる。普段は人に振り向かれている愛が、今だけは自分だけに注がれているのだ。それも、人助けの時なんかよりもずっと大きな愛だ。
「うん!」
六花は今一度唇を押し当て、マナの温もりを味わった。
*
日曜日。
あの時出来なかった買い物の待ち合わせで、六花は同じように腕時計を見ながらマナが現れるのを待っていた。
「まだかなぁ……」
不安げに周囲の人混みを眺める。
自分に向かって近づいてくる女の影が、こちらに向かって大きく手を振っているのに気だついた。
「お待たせ六花!」
「マナ! 今度はちゃんと来てくれたんだね?」
――まだ、待ち合わせより三十分も早い時間だったというのに。
「言ったでしょ? もうあんな思いはさせないって。行こう? 六花」
「うん!」
二人、手を繋ぎながら歩き出す。
その時だった。
「うえーん! うえーん!」
子供だった。
五歳か六歳か、そのくらいの男の子が一人で泣きぐしゃっている。なのに通行人は誰一人として子供に構うことなく、子供の前を冷淡に横切っていた。
(きっと迷子だ。でも……)
マナは六花の顔を見る。
また六花を放っておくなんて、できっこない。
だけど、子供も放っておけない。
「行きなさいよ。マナ」
「え? でも……」
「助けたいんでしょ? しょうがないから少しだけ待っててあげる」
呆れたと言わんばかりの表情で、六花はそう言ってくれた。
「本当にいいの?」
「よくないわよ。だけど、マナの事だから仕方ないでしょ」
このまま子供を助けに行き、はぐれた母親を一緒に探せば、どれだけ時間を潰すかわからない。すぐに見つかればなんて事はないが、もしも中々見つからなかったら? そのときは、一体どれくらい六花を待たせることになるだろう。
意を決して、マナは六花の手首を掴んだ。
「一緒に行こう? 六花」
「え? 一緒にって、私も?」
「そうだよ! もう六花に寂しい思いはさせない! その変わ
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