GGO編
百二十話 導く温もり
[9/20]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
が捕まるのも時間の問題だろう。さて、後の事については……君達の方がよく知っているかな。新川恭二は大会後、朝田さんの家を訪れた物の……直前で、どう言う切っ掛けによってか狂気的なその目的を破棄。正気に戻ったためか自責の念から自殺を図るも、朝田さんの貢献あってそれも直前で踏みとどまらせる事が出来た。直後には新川昌一も逮捕され、金本は手配中。兄弟の身柄は今は警視庁本富士署に在る。長くなったが、以上が事件のあらましだ。何か質問はあるかな?」
「あの……」
「はい?」
声を上げたのは、詩乃だった。本当の事を言うならば、確信を持って答えられるような問いではないだろう事は分かりつつも、詩乃は聞かずには居られなかった。
「新川君……“恭二君”は、これから、どうなるんですか……?」
「うーん……」
菊岡は少し考えこむような顔で、眉をひそめると、眼鏡を指先で上げてから言った。
「新川兄弟は、一応二人とも少年法による審判を受ける事になる訳だけど、何しろ三人も死んでる大事件だ。家裁から逆送されるだろう。そこで精神鑑定が行われるだろうが……これは幸か不幸か……いや、それは正しく無いか。間違いなく幸運だったんだが少しばかり都合の悪い事に、今の新川恭二少年は、自分自身の理性と正気を完全に取り戻している。だから、そこでは引っかからないだろう。当然、自分の罪から出る罰を正面から受け止めなければならない訳でだが……」
そこで少しだけ息をついて、胸の前で軽く手を組むと、菊岡は少しだけ嬉しそうに微笑んで言った。
「これは間違いなく幸運な事に、彼は自分の罪に対して心から反省している。それに、在る程度は同情すべき点もある。“誰か”が、彼の弁護的な立場の証人として立ってくれるなら、裁判官はともかく、裁判員達の判断を温かな物にしてくれる可能性も十分にあると思いますよ。……っと、これを僕が言ったのはご内密に」
「……は、はいっ!」
企むように、あるいは面白がるように笑って、菊岡は言葉を結んだ。
詩乃が焦ったように返事をすると、嬉しげにニコリと微笑んで、時計を見た。
「おっ……と、それじゃ、そろそろ行かなくては。閑職とは言え、雑務に追われていてね。これにて失礼」
「あぁ。悪かったな。手こずらせて」
和人が言うと、詩乃と美雨がぺこりと頭を下げた。
「あの、ありがとうございました」
「ありがとうございました」
「いえいえ。貴方方を危険な目に会わせてしまったのは我々の落ち度ですから、これくらいはしないと。また、新しい情報が有ればお伝えします」
それを聞いてから、涼人が口を開いた。
「ごっそさん」
「あ、うん」
簡潔なその言葉に苦笑しながら頷いた菊岡は、ビジネスバッグにPCをしまうと、そのまま立ち上がり伝票に手を伸ばしかけて……その手を止めた。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ