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SAO─戦士達の物語
GGO編
百二十話 導く温もり
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、不意に涼人と目が合う。自身が注文した五つのケーキよりも先に軽食のBLTサンドにかぶりついて居た涼人は、少し前から此方を見ていたようで、詩乃と目が合うと、ニヤリと笑って再び食事に戻った。

「…………」
それがどういう意図の笑顔なのか、何となく分かった気がして、詩乃は少し気恥ずかしくなりつつ、紅茶をもう一口飲んだ。
ちなみにキリトはと言うと、黙々とモンブランの金褐色の山を切り崩していた。

────

さて、少しの間食事を楽しんだ後菊岡の口から現時点までで分かっている今回の事件の内容が語られ出した。
といっても、それはほんの四十時間前に終結したかの事件に対する涼人達の知らない部分……特に、動悸や、新川兄弟の価値観等に対する補足の多い物で、トリックや実行の手順に関しては幸か不幸か個人情報の盗み取り、狂気の用意、タイミングや侵入の方法に至るまで、涼人や和人が推測した物とほぼ同一だった。

ならばその動悸や、彼らが其処に至るまでを軽く纏めると、つまりはこういう事だ。

元々、恭二の兄である新川昌一、涼人や和人の言う所の赤目のザザは病気がちで、中学卒業まで入退院を繰り返し、高校にも一年遅れて入学したらしい。そのため、息子を後継ぎにしたかった父親は、早々に昌一を後継ぎにする事を諦めた。と言えば聞こえはいいが、実際の所は見限った。と言った方が正しいだろう。
そして同時に、その役目を、父親は恭二に与えたらしい。まぁこれも言い方を変えれば、押し付けた。と言う事が出来るが其処は敢えて言及しない。

父親は、恭二には家庭教師を付け、自ら勉強を教えるなどした反面、昌一に対しては生活費を与える等親としての最低限の義務を果たす意外、一切帰り見なかったらしい。
結果として言うなら、昌一は期待されない事で、恭二は逆に期待されることで、人生レベルで追いつめられていったのだ。

ただだからと言ってこの二人の兄妹仲が悪かったかと言うと……そうでもない。
初め、MMORPGを始めたのは昌一の方だったらしい。所謂逃避行動の一種として始められたその行動は、すぐに弟である恭二にも伝播した。

そうして、昌一はSAOに捕らわれ、二年と言う長い昏睡状態に入るのだが、現実に生還した昌一を、恭二はある種、英雄視したらしい。

そして、自宅に戻ってから、恭二に対してのみ、自分がSAOで行った事……すなわち、殺人者として恐れられた彼を語ったらしい。

恭二に曰わくその頃の恭二に取って現実(リアル)仮想(バーチャル)の狭間に有るようなその話しは、「気持ちの良い」類の話だったらしい。
この先は恭二自身は明確には名言しなかったらしいが、上級生からの恐喝や成績の低下による強いストレスを受けていた恭二にとっては、確かに自分の話しには解放感や爽快感を感じただろう
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