GGO編
百二十話 導く温もり
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「いらっしゃいませ」
つい数日前にも入った銀座の喫茶店の扉を、涼人は再び開いていた。相変わらず白いシャツにネクタイを付けた上品なウェイターが深々と頭を下げるのに、「連れが居るはずなんスけど……」と言うと即座に奥から声。
「あ!リョウくん!おーい!」
シックな雰囲気ぶち壊しなその大声に、涼人は少々辟易としつつも、表情を変えずに言う。
「あぁ、居ました」
「かしこまりました」
同じく表情を変えずに一礼したウェイターに案内されて、涼人はマダムやムッシュの間を歩いていく。
「よぉ。菊っち」
「ははは、君が一番のりだよ。早いね?」
「まぁ、な。聞きたい事もあったし」
頬杖を突いてニヤリと笑って言った涼人に、菊岡は一瞬驚いたような顔をすると共に、少し面白がるような顔で笑った。
「へぇ。何かな?」
「ん。なぁ、菊っち」
涼人は特に思う所も無さそうに、それを聞いた。
「“特別国家公務員”って暇なの?」
「…………」
その言葉に、菊岡の口の端がピクリと引きつった。
次いで笑顔が苦笑に変わり、頭痛そうに額を押さえる。
「ちょっと早くないかなぁ?」
「うははは!ま、俺は俺なりに情報源有るしな。つーかお前が彼奴紹介したんだろ?カズには教えなかった癖して」
爆笑しながら言った涼人に、菊岡は「あー」と言いながら後ろ手に頭を掻く。
「まあ気付くよねー。じゃあそっちの事もあの人に聞いたのかい?」
「当たりは付けてたからな。素直に聞いたら素直に答えてくれたぜ?変わりに飛んでもねーサプライズが帰って来たけどな。アレもどーせお前の仕業だろ?」
呆れたような、しかし半ばイラついたように涼人が言うと、菊岡は白々しく両手を上げた。
「わぁ、暴力には出ないでくれたまえ。店にも迷惑だしね」
「当たり前だ。……で?何のつもりだてめぇら、彼奴と何企んでやがる」
言葉の後半は、低く、脅すような言葉だった。その言葉に菊岡は素晴らしくにこやかに笑って、上げた両手をヒラヒラと振る。
「ははは。企むなんて人聞きが悪いよ。確かに協力はしてもらってるけど、何も悪いことなんかしてないさ」
「ほざけ。彼奴が関わってる話がまともな話しなわけ有るかってんだよ。それぐらい――」
「“俺は身を持って知っている?”」
「…………!」
菊岡の一言と共に、涼人は大きく目を見開いた。いつの間にか腕を下ろし、両手の指を胸の前で組んだ菊岡の目は、光の反射で、真っ白になったメガネの向こう側にあり、その表情を読み取る事は出来ない。
「僕らが何をしているか、すまないけど今は教える事は出来ないんだ。大丈夫……何れ、手伝って貰うときも来るからさ。その時の安全は、僕の肩書きに賭けて保証するよ」
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