第二幕その七
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第二幕その七
「ここだ」
「こんな場所ですか」
「こんな場所とは何だ」
パパゲーノの言葉にむっとした顔で返す僧侶だった。
「ここでは黙っているのだぞ」
「またですか」
「だから文句を言うな」
パパゲーノに対してあくまで言う。
「いいな」
「わかりましたよ。それじゃあ」
「わかったら早く入れ」
こう言って二人をそのまま部屋に入れる。そこはピラミッドの玄室の一つだ。タミーノとパパゲーノはこの部屋に二人だけとなった。
「タミーノさん」
「・・・・・・・・・」
パパゲーノの問いに言われた通り沈黙で返す。
「何て生活なんだ。おいらには自分の藁の家や森の方がいい」
「・・・・・・・・・」
「そこだと鳥の声がしょっちゅう聞こえる」
「・・・・・・・・・」
「何も仰らないんですか」
「・・・・・・・・・」
無言で頷くだけのタミーノだった。
「面白くないなあ。水一滴もないし」
こんなことを言いながら玄室を出て廊下を歩いていく。そして空中庭園に出た。夜の中に緑の木々が見える。そこに入るとであった。
「パパゲーノ」
老婆の声がしてきた。
「パパゲーノ」
「誰だい?おいらを呼ぶのは」
「私よ」
こう言ってその灰色のフードに全身を包んだ腰の曲がった老婆が出て来たのだ。
「私がなのよ」
「水はあるかい?」
「水?」
「ああ、あるかい?」
「ほら」
こう言って水の入った皮袋を出してきたのだった。
「これをどうぞ」
「悪いね。しかし」
「しかし?」
「退屈だよ、ここは」
その試練が最初から嫌で嫌で仕方ないから言うのであった。二人は石のところに並んで座ってそのうえで話をするのであった。
「全くね」
「そうなの」
「それでだけれど」
ここであらためて彼女に問うのだった。
「あんたは誰なんだ?」
「私かい?」
「名前は何ていうんだい?」
「パパゲーナっていうんだよ」
こう皺がれた声で答えるのだった。
「それが私の名前だよ」
「何だ、おいらと同じ名前だな」
「そうね」
「それで歳は幾つなんだい?」
「十八歳だよ」
ここで楽しそうに語るのであった。
「へえ、十八歳かい」
「そうだよ」
「八十歳の間違いだろ」
それを聞いて顔を少し横にやって言うパパゲーノだった。
「そりゃ」
「それでパパゲーノ」
今度はパパゲーナから聞いてきたのだった。
「あんたは」
「おいらは?」
「まだ聞きたいことがあるかい?」
「そうだな。あんたいい人はいるのかい?」
問うのはこのことにしたのだった。
「それで」
「勿論だとも」
「へえ、そうなのか」
パパゲーノはそれを聞いてまずは頷いた。
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