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魔笛
第二幕その六
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第二幕その六

「その為にさ」
「私が貴方を」
「そうさ。どうだい?」
「それは何があってもできません」
 一言で断るパミーナだった。
「何があっても」
「駄目だってのかい?」
「はい」
 あくまでそうだというのだ。
「私はタミーノに全てを捧げると誓いました」
「そんなのどうだっていいじゃないか」
「よくはありません」
 あくまで引こうとしないパミーナだった。
「私は」
「そう言わなくてもさ。俺だって」
「モノスタトスよ」
 しかしであった。ここでザラストロが来て。そのうえでパミーナの前に来て彼に言うのであった。その顔は極めて厳しいものである。
「言った筈だ」
「あのですね。俺だって」
「ならん」
 多くは言わせなかった。
「わかるな。さもなければだ」
「わかりましたよ。俺は用無しってことですね」
「娘にはもう相手が決まっている」
 こう彼に言うのだ。
「だからだ」
「じゃあ俺はどうすれば」
「相応しい相手を探せ」
 これがモノスタトスに告げる言葉だった。
「それでいいな」
「わかりましたよ。じゃあ」
 モノスタトスもここで遂に諦めた。しかしであった。
 去る中でだ。彼は呟くのだった。
「もう昼の世界には嫌気がさしたな。夜に入るか」
 こう言って姿を消した。パミーナが泣きそうな顔で父に言う。
「お父様」
「あれが来ていたのだな」
「はい」
 父の言葉にこくりと頷く。
「その通りです」
「困ったものだ」
 それを聞いてまずは目を閉じて言うザラストロだった。
「それは」
「ですがお母様は」
「何もわかっていないのだ」
 ザラストロは娘にこう告げた。
「だが」
「だが?」
「この神聖な神殿の中では人は復讐というものを知らない」
「復讐をですか」
「そうだ」
 まさにそうだというのである。
「一人の人間が死んだならば」
「その時は」
「愛が彼を為すべき務めに導くのだ」
 こう穏やかに娘に語るのだった。
「そして彼は友の手を取り」
「どうなるのですか?」
「満ち足り嬉々としてよりよい国に向かうのだ」
「そういう場所なのですね」
「その通りだ。人が人を愛する場所だ」
 まさにそうだというのである。
「憎しみを感じることはないのだ。人は赦すもの」
「人を?」
「人は憎しみを超えなくてはならないのだ」
 それはまさに高尚そのものの言葉だった。
「その様な教えを備えなくてはならないのだ」
「そうなのですか」
「あれにも。モノスタトスにも」
 彼等のことを考えての言葉だった。
「それをわかってもらわなくてはな」
「それをなのですね」
「昼の世界もまた」
 具体的にはその世界をだというのだ。
「わかってもらわなくてはな」

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