急変
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よく似た声なのだ。もしも彼女が思い浮かべている人物ならば、間違いなく勝てない。それが分かってしまった。
「くそ!一体何なんだよ!?」
だが、その人物の危険性と自分との実力差を知っているために絶望して行動が止まったエリカとは違い、護堂の行動は素早く、そして的確だった。
「う、おおおおおおおおおおおおおおお!?」
「き、きゃああああああああああ!?」
護堂は、完膚無きまでに破壊された壁から、外へと飛び出したのだ。火事場の馬鹿力で、エリカと黒猫をその両腕に抱いたまま。見える風景から、この場所が相当高い位置にあることは把握していたが、それでもこの場所にこのまま居るよりは、飛び降りたほうが生存確率が高い事を、本能で理解していた。
が、突然の襲撃で混乱していた時に、気がついたら空中にいたエリカの動揺は大きかった。涙目で護堂に抱きつきながら、可愛く叫び声を上げている。
「おい、空を飛ぶとかできないのかよ!?」
だが、護堂の切羽詰った叫びに僅かながら冷静に戻った彼女は、『跳躍』の魔術を発動した。この魔術は、助走なしのジャンプで自分の身長よりもはるかに高く飛べるようになったり、垂直の壁を走って登れたりする便利な術で、香港の格闘映画を愛するエリカが、愛用している術だ。ただ、魔女術の『飛翔』とは違い飛ぶことは出来ず、ただ跳ねるだけなので能力的には落ちるのだが。
それでも、この場所から撤退することくらいは出来る。
「捕まってなさい!」
この混沌とした場所から逃げることが出来る。この考えが、彼女を完全に冷静にさせた。あの相手と戦えば死ぬのは確定している。だが、自分の得意な術ならば、例えお荷物が居ようとも逃げることくらいはしてみせる!
彼女たちは、『跳躍』の魔術により、夜の街へと消えていった。
『何で転移の座標がズレたの!?』
『姉上、アレをご覧下さい!』
『あ?・・・・・・あぁ!?早穂ちゃん何してるの!?』
『錯乱しているようです!止めましょう!』
『そうだね。状況把握は後回し!今は早穂ちゃんを止めることに全力を注ぐよ!』
・・・・・・・・・裸の護堂を連れて。
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