第二幕その一
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第二幕その一
第二幕 試練を経て
ザラストロは厳粛な会議の場にいた。白い輝かんばかりの円卓の一席に座ってである。共に座す僧侶達に対して問うのであった。
「さて」
「はい、ザラストロ様」
「今日のことですか」
「そうだ。日本から来たあの若い王子だが」
「確かタミーノ王子でしたね」
「あの若者は」
「そう、名前はタミーノという」
ザラストロもその名前を認めた。
「先程話したがこの昼の世界に入りたいそうだ」
「夜の世界から昼の世界に」
「我等の世界にですね」
「人は光と闇の両方を知ってこそだ」
ザラストロはこんなことも言った。
「それならば我々はどうするべきか」
「その知ろうという徳高い若者を見守るべきです」
「友情を込めて手を差し伸べるべきです」
僧侶達は口々に言った。
「是非共です」
「そうしましょう」
「その通りだ」
まさにそうだと述べるザラストロだった。
「それではだ。いいな」
「はい、それでは」
「秘密は」
「口の堅い若者だ」
それも大丈夫だというのだ。
「そして慈悲深い」
「では問題ないかと」
「それで」
僧侶達は口々に述べた。
「ザラストロ様の仰る通りに」
「若者にはまず試練を」
「人はまずは偏見故にまずは過ちを犯してしまう」
ここでザラストロは言うのだった。
「しかし知恵と良識がその誤ちを蜘蛛の巣の様に打ち砕き」
「そして光が」
「我等に」
「我等の支柱を二度と揺るがすことはない。だが偏見は去らなければならない」
「その通りです」
「それも」
僧侶達はザラストロの言葉に続く。
「タミーノが我等の奥義を完全に備えればそういったものはすぐに消え去る」
「すぐにですね」
「それも」
「そう、消え去る」
まさにそうなるというのだ。
「そしてだ」
「そして?」
「何なのですか?」
「その傍にあの徳高い乙女パミーナを」
「あの王女をですね」
「そう、神々はあの若者に定められた」
そうだというのである。
「ではザラストロ様」
「うむ」
「彼にその試練を」
「そう考えている」
こう僧侶の一人に述べた。
「是非にだ」
「試練に耐えられるでしょうか」
「オシリスとイシス、そして神々が導いて下さる」
これがザラストロの返答だった。
「だからこそだ」
「心配は無用だと」
「そういうことですね」
「その通りだ」
まさにそうだというのだ。
「神々よ、新たな二人の若者に智恵の本義を与え給え」
「はい、あの二人に」
「是非」
僧侶達はザラストロの言葉に続く。
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