暁 〜小説投稿サイト〜
Tales Of The Abyss 〜Another story〜
#5 静寂に訪れる絶望
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その獰猛な爪と牙の連撃をその身体に受けてしまった。

「っぁ!!」

 これまでに受けた事の無い痛みが身体を襲う。痛覚と言う感覚信号が一気に脳に叩き込まれ、膝をつきそうになったその時だ、そのウルフ達の次は移動速度の遅いゴーレムがその豪腕を振り上げそのまま叩き付けた。

 ずがぁんっ! と言うこの小さな坑道内に鈍き響き渡る轟音。その根源たる力が、そのままアルに叩き込められたのだ。

「ぐぁっ!!」

 当然、防具などつけている筈も無い普段着の姿。
 アルは、そんな衝撃に、攻撃に身体が堪えきれるわけも無く、吹き飛ばされ、この坑道の壁に背中から激突した。

「ッ……ぁ……く……っ……」

 アルは、たった一撃で、体がバラバラになりそうな感覚に襲われていた。肺の中に詰まっていた空気が一気に吐き出され、内部を思い切り上へと持ち上げられた感じがする。……新たな空気を吸う事が出来ない。
 感じた事も無い感覚、痛み。それは、死を意識した感覚だった。

 アルが吹き飛ばされたのを間近で見たサラは……、その場から動く事が出来なかった。ただただ、涙を流しながら、アルの方を見て、手を伸ばしていた。


「おっ おにいちゃん……っ、お、おにいちゃんっ……!」

 サラは力いっぱい叫んだ。大切な、大好きな人があんなことになってしまったから。

 そして、当然の如く、その叫び声にモンスター達は反応する。今度は、標的を動けないアルでは無く、サラに変えた。いや、アルが飛ばされた事で必然的にサラが一番近い標的となってしまい、そのまま 変えられてしまったのだ。

「く……そっ……! さ、サラっ! に、 にげろ、にげるんだ……っ!」


 アルは、必死に叫ぶ。せり上がった肺に空気を無理矢理ねじ込むと、そのまま声として吐き出した。

『逃げろ』と。

 だが、その想いも届かず。

「あっ……ああっ……」

 あまりにも、ショックが大きいのかサラはその場で震えているだけだった。
 もう 数秒もせずに モンスター達は襲い掛かるだろう。……自分の時の様に、待ってはくれないだろう。

「た、たのむ、おねがいだ。……に、にげてくれ!サラぁぁっ!!」

 アルは、動けない身体にムチを打つ様に、気力で立ち上がろうとするが、全く身体が言う事を利いてくれない。自分の身体じゃないかの様に、まるで動けない。


――……絶望がすぐそこまで迫っていると言うのに。ずっと、ずっと、こんな幸せな時間が続けばいい。この温もりをずっと、と思っていたのに、こんな所で、全部終わってしまうのか?


 アルは涙を流しながら、サラへ声を、叫び声を掛け続けた。逃げてくれ、と。
 だが、絶望の方が早かった。

「お、おにい……」

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