第一幕その十
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第一幕その十
「何かそこから来られたて」
「それでその日本の王子が」
「この肖像画を見て貴女を救われようと決意されたのです」
「私の肖像画を見てなのね」
「はい」
まさにその通りだというのだ。
「その通りです」
「それじゃあ」
パミーナはその話を聞いてだ。あることに気付いた。それは。
「その方は私を愛して下さっているのかしら」
「はい、それは間違いありません」
これはパパゲーノも傍で見て知っていた。
「ですからここからすぐに出て」
「わかったわ。それじゃあ」
「それにしても」
ここでパパゲーノはふと思ったのだった。
「タミーノ様にはパミーナ様ができて」
「どうしたの?」
「パパゲーノには。パパゲーナかな」
名前が自然に出て来た。
「彼女がいないとなあ」
「貴方はまだ一人なの」
「ずっと一人ですよ」
生まれた時も親もわからないからそれは当然だった。
「もうずっとね」
「そうだったの」
「ええ。困ったことに」
「相手はすぐに見つかるわ」
パミーナは優しく少し落ち込んだパパゲーノに話した。
「だからね。気を取り直して」
「だといいんですけれど」
「恋を知る程の男の人は善良な心を持っているわ」
「甘い衝動を一緒に味わうのが女の人の第一の勤めですかね」
「そうよ」
まさにそうだと答えるパミーナだった。
「だからね。貴方もそうした相手とね」
「一緒にですか」
「そうよ、一緒にね」
こうパパゲーノに話すのだった。
「恋はあらゆる苦痛を鎮めて命あるものは誰もが恋にその身を捧げるのよ」「ですね。恋は」
パパゲーノはさらに言った。
「日々の生活に味をつけてこの世を滑らかに動かしてくれます」
「恋を喜びそれによってのみ生きる」
「そうしていくと」
「ええ。夫婦であることで人は神々しさに達するのだから」
「じゃあおいらも」
ここまで聞いてパパゲーノは遂に気を取り戻した。顔に陽気さが戻っている。
「相手を見つけます」
「ええ、それじゃあ今は」
「ここを」
「去りましょう」
こう言って去るのであった。そしてこの頃タミーノは。
「さあ王子」
「もうすぐです」
「間も無くです」
三人の少年達が彼を導いていた。
「この道を行けばもうすぐ辿り着きます」
「そして男らしく戦って下さい」
「その為にです」
「僕達はです」
こう彼に声をかけて導くのだった。
「教えに従い穀然としてです」
「耐え忍び」
「沈黙を守っているのです」
「優しい少年達よ」
タミーノはその彼等に問うのだった。
「僕はパミーナを救えるだろうか」
「それは何とも申し上げられません」
「言えないのか」
「はい、まだ」
「それは」
できないというのだ。
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