十六話
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一秒ずつに離れて小さくなっていくシュナイバルを、一年近く過ごした都市を見ながらレイフォンは良く分からない感情を感じていた
胸に小さな痛みがある様な、そんな感情
グレンダンを出たときにはなかった、良く分からないものだ
それを伝えると、エリスはいつも通りの無表所に近い顔でレイフォンに教えた
「それはきっと、郷愁や悲しみという物に近い感情だと思います。まだ昔の事にはなっていませんが、きっともう来ることはないでしょうから」
「……ああ。だからグレンダンを出る時にはなかったんだ」
グレンダンに戻ることは確定していた。だが、シュナイバルにはきっともうこないだろう
この世界で自分が生まれ育った以外の都市に、それも無関係の都市に二度も訪れる事などまずない。シンラ達の様な者たちでない限り、それはほぼ確定の事実
だからきっと、今の自分は親しくなった人達と会えなくなることに悲しさを感じているのだろう
そう、レイフォンは自分の感情を理解した
「レイフォンはまだ十三ですからしょうがないと思います。都市をいくつも回ってきた私たちは慣れていますし、そこまでのものではありませんが。……もっとも、生まれた都市を捨て、ただ自分の興味で世界を周っている私たちは、当たり前のどこかが欠落している可能性もありますがね」
シンは特にそうです……と言い、エリスは歩いて行った
離れていく都市を見ながら、レイフォンは一人でその光景を見ていた
既に痛みなど無くなっていることに、気づくことはなかった
こうして一同はシュナイバルを去り、放浪バスの指針はヨルテムを目指し走って行った
????????※※都市※※※※※
荒廃した街の中に彼女はいた
顔を歪ませ、慟哭の叫びを上げていた
彼女は激怒していた。絶望していた。憎んでいた。それを抱く心さえ壊れかかるほどに
自分が愛するものを、守るはずだったものを、その全てを蹂躙した存在を呪っていた
既に彼女が愛していた者達はいない。悉く殺戮者に■された
家々は潰され、道は陥没し、所々に黒い塊が散乱していた
彼らを守るはずだった壁はもはやその意味をなさない。穴をあけられ、人がいるはずの空間に一人として影はない
腐臭をまき散らすこの都市の中で、彼女が守るはずだった者達の残骸が残る中で彼女は絶望する
既に殺戮者は去った。都市の中には彼女独り
誰一人守れなかった彼女は無人の世界で無力を嘆く
彼女は只々、憎しみに狂っていた
無人の世界で一人、聞く者のいない慟哭の声を上げ続けていた
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