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神々の黄昏
第一幕その四

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第一幕その四

「彼は今は槍の破片を胸に持っています」
「そうなのですか」
「今は」
 二人の姉はスクルズの言葉に頷く。
「しかしローゲは」
「何を望んでいるのか」
「その破片からさらなる力と知恵を手に入れた彼は」
 さらにだと歌われる。
「ヴォータンの望みを知りました」
「ヴォータンの」
「その望みを」
「そうです」
 知ったというのだ。
「そしてヴォータンが彼を再びヴァルハラに導いた時」
「その時は」
「どうなるのか」
「それは何時か」
 三人の歌は続く。
「何時になるのか」
「夜が遠ざかっていく」
 ウルズが言った。
「私にはもう何も見えない。網の編み目すらも」
「それすらも」
「既に」
「そう、見えなくなった」
 そしてさらに歌っていくのだった。
「網もこんがらがり一人の男の荒々しい顔が私の心を恐ろしく乱す」
「その男とは」
「誰なのですか?」
「アルベリヒ」
 この名前が出て来た。
「かつてラインの黄金を盗んだ男。あの男は」
「網が」
 今度歌を出してきたのはヴェルザンティだった。
「網が岩の尖った先に突き刺さってしまった」
「糸は大丈夫なの?」
「それで」
「今は大丈夫です」
 今はというのである。
「ですがあまり強く引っ張らないで下さい」
「わかったわ」
「それは」
 二人もそれで頷くのだった。そして実際に手を緩めた。
 そのうえでだ。さらに歌は続く。
「ニーベルングの指輪が。あの指輪が危急と怨恨の中から浮き出て見えます」
「その指輪が」
「それが」
 二人はヴェルザンティの言葉に応える。
「その復讐の呪いがですね」
「それが」
「そう、それが私の網を噛んでいる。未来はどうなるのか」
「網が緩み過ぎて私まで届かない」
 スクルズが応えてきた。
「この端を投げるには」
「けれど」
「もう糸は」
「あ・・・・・・」
 そしてだった。まずはスクルズのものがだった。
「切れた」
「私の糸も」
「私のものも」
 ヴェルザンティとウルズのものもだった。全て切れてしまったのだ。
 三人の女神達の声は愕然としていた。その中での歌だ。
「永遠の叡智の終わり」
「世界は賢者達の言葉を聞くことはもうない」
「では我々は」
「もうこれで」
「母上の世界に戻りましょう」
 彼女達は深く沈んで行った。そのまま姿を消していく。何もかもが消え去った。
 あの岩場だった。炎はないが荒涼としたままである。ジークフリートはそこに立っている。その後ろに今は槍と盾を持っていないブリュンヒルテが立っている。

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