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Verweile doch! Du bist so schon.
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起こす。
 彼女が悪魔に向かって手を伸ばし。手のひらを開き。
 一瞬、全身が虹色に光る。次の瞬間、彼女の手の上には、虹色の光で構成された蝶のようなものがあった。
 それを指先でつぅっと撫で、手首のスナップで軽く悪魔へと飛ばす。
 ふわふわと、緩やかに飛んでいく虹色の蝶。
 当然、それが届く前に悪魔は気づき。防ごうと、大樹のような触手を幾重にも目の前に展開した。
 そうして蝶が触手に接触し。――膨大な光とともに爆発した。
 あらゆるものを消し飛ばすかのごとく強烈な衝撃は、防御に用いた触手を一瞬で溶かしつくし。さらに悪魔の半身を溶かしつつ彼を吹き飛ばした。
 吹き飛ばされた悪魔が、地面に叩きつけられる。
 その半身は溶け、触手もほとんどが消滅。それでも彼はまだ生きていた。
 その顔は、さまざまな思いが浮かんでいるが、一番は困惑である。さもありなん。彼には、何が起きたかすら知覚できていないだろう。
 生きてきた中で初めて完膚なきまでに叩きのめされている悪魔。
 何だこれは。一体何が起きている。どうなっている。こんな展開、俺は知らない……!
 しかし、現状を理解しようとすることすら今の彼にはできない。もはやただ本能のままの存在であるが故に。
 自動で体が再生を始める。数秒ほどでとりあえず動けるようになり、起き上がろうとして顔を上げる。

「■■?」

 ――そこは一面の華景色であった。
 先程まで快晴であった青空は、黄昏色に。周囲には、毒々しい虹色の華が咲き誇っている。
 今度こそ、悪魔は完全に思考停止した。わけがわからない。何なのだこれは。
 再生した触手が、華に触れる。意図したことではなく、まったくの偶然。しかし、それでも世界は動く。
 その華に触れた瞬間、彼は体の自由を喪失した。触手を動かすどころか、指一本すら動かすことができない。
 身体が痺れ、続けて華から無色無色のガスと燐粉が出て来る。そうして、悪魔の体をゆっくりと包んでいく。
 体が溶けていく。いや、徐々に消失していく。指先、触手の先からだんだんと分解されて大気に混ざっていく。
 意識が消えゆく。もう少しで完全に消滅し、その存在は世界にいなかったこととなる。
 消え行く意識の中、僅かながら理性を取り戻し。
 ……嗚呼、これが俺の終末(さいご)か。せめて、彼女に触れることくらいは、したかった、ん、だが、な……。
 そうして、悪魔は完全に消滅した。
 一連の出来事を遥か上空から眺めている彼女。悪魔は世界から消滅した、いや彼女が消した。
 彼女が指を鳴らすと、華が薄くなって消えていく。黄昏色だった空も、潮を引くように青空へと戻っていく。
 そうして、数秒後には周囲は元の景色へと戻っていた。ただ一つの違いは、もう悪魔はそこにういないこと。
 彼女は
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