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Verweile doch! Du bist so schon.
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ぼこぼこと形を変え、勢いよく岩と悪魔を飲み込んだ。
 正確には、飲み込んだというより同一化したというべきであろうか。
 その塊は、悪魔自身の一部。彼の拠点にして、魂の片割れ。故に、彼の思いのままに操作でき、そして最も落ち着く場所である。
 そうして、再構成される。悪魔を飲み込んでなおぼこぼこと躍動していた塊が、その動きをゆるやかに停止させ、一定の形へと落ち着く。
 それは球体。あらゆる形状の中で最も隙がない完全なる形。
 不完全な不定形から完全な球体へ。同一化による魂の補完。この状態こそが、この悪魔にとっての最適化された空間なのである。
 故に、見た目こそ球状ではあるがその中身は違う。
 その内部は仄暗い。ぼんやりとした光の膜に包まれており、人間の家と同じような造りが見られる。悪魔がかつて人間だった頃にいた世界の人間風に例えるならば、洋式と和式が混ざっているとでもいうのだろうか。
 非常に多種多様な物がごちゃごちゃとしており、人間であれば足の置き場のないほどである。が、彼は悪魔でここは彼の空間。その形状は意のままに変えることができる。
 足元の床らしきスペースからベッドのようなものがせり出てきて、悪魔がそれに飛び乗る。ギシリと音を鳴らして悪魔を乗せたベッドはそのままの位置で静止する。よく見るとそのベッドには様々な装飾が施してある。
 人間たちの世界では売れば小さな国家を買えるほどの価値があるとされたほどの価値のある黄金のベッドではあったが、この悪魔はそれを知らない。ただ、寝心地が気持ち良さそうであったから奪ってきただけである。
 黄金の輝きを放つベッドの上で横になりつつ、悪魔は今後の展開を考える。あの女を手に入れるためにはどうすればいいのか。
 まずは準備が必要だ。彼女をねじ伏せ、その上で万全の状態で迎えるための準備が。
 機嫌よく鼻歌を歌いながら、床に散らばっている物を漁りだす悪魔。
 彼女を捕らえるための準備。彼女の抵抗を奪うための準備。彼女の反撃を防ぐための準備。彼女を口説くための準備。彼女を迎え入れるための準備。総て完璧に。
 ――おっと忘れていた。王に暇を告げないといけない。なにしろ彼女がどこにいるのか検討もつかないのだ。そう簡単には戻ってこれないだろうからな。
 思い出し。ほとんど終わっている準備を停止して、拠点から外出しようとする悪魔。
 右手を室内空間に突き出し、空間の穴を開ける。そこに先程準備したものを入れ、そして空間の穴を閉じる。一時的な保存である。もちろん不可視化して持ち歩くことも可能ではあるが。しかし、今回ばかりはそうすることはできない。
 何故なら、これから会いに行くのは悪魔の王。宇宙の元凶。悪魔という種族の頂点にして、別次元の域に到達している存在。神と呼ばれているほどの実力を持ち、彼が動けば文字
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