§47 -冠を持つ王の手-
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「我は絶対也。法と正義の名のもとに」
「燃えろ」
シャマシュの言葉が、響く。彼の周囲に無数の楔形文字が浮かんでは広がり、消えていく。輝く彼は円環状の何かに乗って宙に浮き。その何かの周りを、迦具土の放った炎が走っていた。炎がゆらゆらと、シャマシュを取り囲み、中心の輪郭を歪ませて見せて。
「厄介そうな貴様からだ!!」
その様子に危機感を抱いたのか、離れた位置にいた梅山の兄弟たちは神速の如き高速で前に出現、各々の得物を振るう。一撃でクレーターをも作るはすであろう一撃が、シャマシュに迫る。
「やれやれ」
どことなく、普段とは違う黎斗の声が彼等に届く前に、異変は起こった。
「な、に……?」
それぞれの腕に伝わった感触は何かを切った感触ではなかった。伝わったのは、何かとてつもなく硬い物にぶつかってしまった時の手が痺れる感覚。鋼鉄すら紙の如く切り裂く彼らが傷つけることすら叶わない絶対的な障壁。突然の事態に後退せざるを得ない彼らに遥かな天上より紅蓮の焔弾が雨霰と降り注ぐ。
「小癪な!!」
思わしくない戦況を感じたのか、酒呑童子から距離を取り、二郎真君は手を翳す。治水の神としての彼の側面。それが振るうのは治水前の川の具現化。荒れ狂う波涛の奔流が太陽神と焔の神を襲い、しかし二柱を華麗に避けて水の流れは彼方の方へと流れ続ける。
「何……」
眉をしかめてその光景を注視する二郎真君は気付く。見えない壁が彼らの周囲を囲っていることを――それも圧倒的な物量をぶつけても歪みすらしない。
「まさか、空間を……?」
動揺しきった状態でも真君の分析能力に陰りは見られない。大抵の物は両断できる梅山の兄弟たちが傷さえつけられない、というところから何が起こったのかを推測する。もし空間断絶の壁ならば、渾身の一撃を振るう必要があるだろう。
「ご明察。だが静止するのはいただけないな」
「――しまっ」
言葉と共に、一条の光線が大国主の額から放たれる。真君の左手を貫き、爆発。
「―――ッ!!」
絶叫を堪える彼の耳に入るのは、太陽神の無慈悲な宣告。
「審判を開始する」
その言葉が、終わりのはじまり。梅山の六兄弟、斉天大聖の義兄弟たち。ランスロット、ドニ、ペルセウス。黎斗に敵対している全ての存在の左腕が、爆ぜた。勿論、吹き飛んだ者はいないが。
「ガッ!!」
「何が!?」
事態が呑み込めない相手を尻目に、黎斗達の攻撃は止む気配を見せない。
「突貫せよ」
テュールが、カイムが、少名毘古那神が。手に己が得物を持って襲い掛かる。ヤマの眷属が、酒呑童子の眷属が。無数の鬼達が徒党を組んで動き出す。
「おいおい、二郎真君くらい好き
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