After days
挿話集
Caliber―器―
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「……良かった。間違ってたらどうしようかと……」
順繰りに和人達も紹介していると……
―バタン!
勢いよく扉が開き、今度は長身の女性――とその脇に抱え込まれた珪子とそんなに変わらないであろう少女が現れた。
「ダイジー・カフェってここだよな?」
「……いらっしゃい、アルセと……ヴィレッタかな?」
「……あ、あたしは近く通っただけだし!それをこの不良女が拉致して……」
「あ゛ぁん!?」
ここで3人の外見を説明しておく。
セインは同上。服装が白を基調に薄めの色で飾ったごく普通の装いだ。
ヴィレッタはTHE今どきの女の子というようなカジュアルだが、下品な印象は受けない。
そしてアルセだが……。
「アルセ、もしかしてソレ、普段着?」
「んなわけねぇだろ。他所行き用だ」
だろうな、その昔ながらの特攻服。
白地の布の縁に赤のラインが施され、背にチーム名であろう漢字が書かれている。詳しくは知らないでおこう。
突っ込みどころは満載であったが、ハンニャは何時まで経っても来なさそうなので、始める事にした。
成人組のエギル、クライン、セインにシャンパン、未成年にノンアルコールドリンクが注がれ―――。
「祝、《聖剣エクスキャリバー》とついでに《雷槌ミョルニル》ゲット!お疲れ、2025年!――乾杯!」
「乾杯!」と唱和しながら俺は思う。俺は何をやっているのか、と。
普通の17歳の少年で、大切な仲間達と本心からこの雰囲気を楽しめれば、どんなに幸せだったか。
こんな気持ちにならずに済んだ筈だったのだ。
怒り、絶望、狂気の赴くままに日常を棄ててしまったあの日。
あの時、違う選択肢があったのでは、と思う。
同時に、あの選択をしなければ今の自分は存在しえないのも分かっている。
何処と無く、悟っていた。
自分の死期が近いことを。
寿命ではない。
狙われているのだ。何者かも分からない、正体の分からないヤツから。
隙を伺い、獰猛な猛禽の如く、俺を付け狙う、殺意。
1年前から時おり、最近は頻繁に視線を感じていた。
(……死にたく、ない)
心からの欲望。『生きたい』という原始的な欲求。
叶わなくとも、叶えたい。切なる願い。
「おーい、レイ!」
「……ん、悪い。何だ?」
「ダーツやろうぜ。……このままだとマジで全額奢る事に……」
「ん?おご……?」
「いいからいいから!真ん中当てろよ!」
「……何なんだ?」
受け取った矢を無造作に的へ投げ付け、思考へ戻ろうとして、止める。
和人がこっちを心配そうに見ていたからだ。
(……やれやれ)
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