十五話
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間の椅子に座るニーナの父が言う
「事情とは何のことでしょうか?」
「とぼけるな。いつもなら小僧が一人庭に向かうだけだが、今日は貴様と共に一直線に私のもとに来た。……貴様が唆したのか?」
「いえいえいえ! 誤解です! 実はですね、午前に御嬢さんと偶々会いましてその時話を聞いたんですよ。なのでそのことや、彼が行っていた御嬢さんの教導のことなどで色々とあるだろうと思い今日は一緒に来たという訳です」
疑いの視線を向けられ、慌ててシンラは否定する
シンラとしてはこの都市で一番力を持つ家の長を敵に回すようなことは出来るだけ避けたいが故に言う言葉を選ぶ
「どこでニーナと会った」
「私どもの旅団の拠点で。長らく教えを受けていたのでレイフォンに別れの挨拶を言いに来たと。その時になって初めて知りました」
「では、ニーナの出奔に貴様らは関係ないと言い張るつもりか?」
「私どもの存在が影響を与えていたという可能性は否定できない以上、無関係だと断言はできないでしょう。ですが、唆したなどという事は誓ってありません」
「ふっ、どうだかな。小僧など顔を青くしているではないか。後ろめたいことがあるのではないか? 何か言ったらどうだアルセイフとやら」
すまし顔で言うシンラの言葉が信じられないのか、隣で青い顔をしているレイフォンにニーナの父の視線が移る
子供は顔に感情が出やすい。それ故疑いの目が向けられたらしく厳しい視線がレイフォンに向けられ、青い顔をしながらレイフォンが重い口を開く
「すみま……せん。お腹の調子が悪いので、トイレ……借りても、いいですか? ……ぅぷ」
「……何?」
「すみません。どうやら昼食で苦手な物でも出たらしくて。トイレを貸してもらえますか?」
「……突き当りを右に行け。分からなければ女中にでも聞くと良い」
ありがとうございますと言いレイフォンがそそくさと部屋を出ていく
(これでなんとでもなる)
それをシンラはありがたく見ていた
見ればアントーク家当主は今のやり取りで毒気を抜かれたように張りつめていた圧力を緩め、やや呆れたような表情を浮かべている
その上、今この場においては最もやっかいなレイフォンが今ここにはいない
先ほどシンラは唆すようなことは言っていないと言ったが、実際にはそれに近いことを二か月前に言っている
それがなくとも今日、ニーナが出る意思を決めたのはレイフォンの御蔭だと言っているのを聞いている
もし自分が何も知らず、レイフォン一人を送り出していたならどうなっていたどうかと少し思案する
(考えるまでもないか。レイフォンの話す内容によるけど、ほぼ確実にレイフォンは気が萎縮してしまう。運が良ければ何もなくて済むけど、恐らく当主に詰問され今日有ったことと会話をほぼ
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