第八章 望郷の小夜曲
第六話 変わらないもの
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「え、あ!」
セイバーの冷ややかな声に慌ててティファニアの胸から手を放す士郎だったが、手を放した瞬間ティファニアの身体がそのまま倒れそうになったことから慌てて抱きとめる。
―――その際、出来るだけ胸に手が当たらないようにした。
抱きとめたティファニアとセイバーの間を、焦りながらも交互に視線を移動させる士郎にセイバーは背を向ける。
「セイバー?」
「……どうせ私の胸は小さいですよ……」
「せ、セイバー? ど、どうかしたのか?」
恐る恐ると声をかける士郎だったが、何やらぶつぶつと呟くセイバーの様子に再度声をかける。
「な、何でもありません! ティファニアを連れて行きますのでさっさとこちらに渡してください!」
「え、あ、わ、わかった」
背中を向けたまま手だけを士郎に向けるセイバーに、士郎が慌てて何時の間にか眠りこけていたティファニアを引き渡す。セイバーは背中を向けたまま器用にティファニアを受け取ると、自分の下に引き込む勢いを利用してティファニアをお姫様抱っこする。そして、その場から無言で立ち去ろうとするセイバーの背中に向け咄嗟に士郎が声を掛けようとしたが、躊躇している間にどんどんとその背中が小さくなる。一人取り残された形となった士郎が呆然と立ち尽くす中、絶対に勘違いしているだろうセイバーとの今後のことを思い浮かべると、恐怖に身体をぶるりと震わせ、
「―――なんでさ」
と深い溜め息と共に呟いた。
「やはりあのまま行かせたのは間違いだったか……っく! だが後悔は後だっ! このままだと追いつかれる!」
「待ちなさいシロウッ!! 逃げるとは何事ですかっ! 正々堂々かかってきなさい!!」
「断るっ!!」
段々と近づいてくる背後からの声に、士郎は言い様のない寒気を感じながらも反論する。強化した身体で全力で逃げる士郎だったが、流石はかの名高きアーサー王。一秒毎に距離は狭まっていく。このままでは追いつかれると判断した士郎は深く足を曲げ、強く地面を蹴ると同時に、
「投影開始」
投影した合計八本の黒鍵を両手の指の隙間に挟むと、後ろを見ずに投擲する。
「甘いッ!! それで足止め出来ると思っているのですか!!」
「っく! 一瞬も足止め出来んとは!?」
迫る八条の黒光を、セイバーは走る速度を落とすことなく円を描くようにデュランダルを振ることで切り裂く。
黒鍵を投擲したことから、更に距離が狭まり士郎の中に焦りが募る。
どどど、どうする!?
このままでは本当に追いつかれるぞ!
追いつかれれば、本当に斬り殺される勢いだ!!
誤解だと!
誤解だと言っているのにッ
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