第八章 望郷の小夜曲
第六話 変わらないもの
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れはシロウさんにとっても魅力的ですか?」
「っあ?! ……あ、ぁ、ま、まあ、それは……否定は……しない」
―――胸を両手で持ち上げた際、右手を胸で挟み込むようにしたのは偶然だろうか?
「そう、ですか」
右手を胸で挟み込みながら、顔を背ける士郎を下から覗き込むティファニア。士郎は真っ赤に染まった顔を必死に逸らしながらも、ティファニアの問いに激しく頭を上下させる。
「なら、昨日アルトに言ったことは取り消さないと」
「……昨日セイバーに言ったこと? 何か言ったのか?」
唐突に話題が変わったことに士郎は助かったとばかりに先を促すと、ティファニアはえへへと笑う。
「あ、はい。昨日の夜セイバーと今みたいに話しをしていたんですが、その時アルトに「わたしもアルトみたいに小さな胸だったら良かったのに」って言ったんです」
困ったような顔で小首を傾げてみせるティファニアに、士郎はセイバーのここ最近の今朝の機嫌の悪さの理由が判明しガクリと頭を落とした。
「っあ……て、テファが犯人だったのか」
「え? え? だ、大丈夫ですか」
右手をティファニアの胸に挟まれた姿のまま椅子に深く倒れ込むように座る士郎に、ティファニアはどうかしたのかと慌てて立ち上がったが、
「あれ、え? きゃっ」
短い悲鳴を上げながら身体のバランスを崩す。
ティファニアは短い間にワインをほぼ一本は飲み干しており、更には士郎の右手を未だ胸に挟んだままであったことから、椅子から立ち上がると同時に士郎に向かって倒れ込んだ。
「おっと、大分酔いが回っているようだな、大丈、ぶ……か……」
士郎は咄嗟に自由な左手を倒れ込んでくるティファニアの背に回し抱きとめる。鍛え抜かれた士郎の身体は、ティファニアの身体をしっかりと受け止めたが、抱きとめた際の反動で右手が胸の谷間から解放されたはいいが、今度はその手でしっかりと、がっしりとティファニアの胸を掴んでいた。
抱きとめたことからティファニアの美しい顔が目の前に。窓から届く星明かりしか光源がないにもかかわらず、その美しさがはっきりと分かる美貌と、どんな花の香りよりも甘い香りに士郎の思考が一瞬停止する。
だから、その気配に気付くのが遅れてしまった。
後ろから迫る影―――。
「―――何をやっているんですかシロウ」
セイバーに。
「っ、せ、セイバー!? い、いや、何でもないぞ何で、も……」
ぐるりと首を回し後ろを見る士郎だったが、冷ややかな視線を向けて来るセイバーの姿に咄嗟に口から出そうになった弁解は尻窄みに消えていく。
「何時までそうやっているつもりですか?」
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