第八章 望郷の小夜曲
第六話 変わらないもの
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んですが。その中にたまにワインがあるんです」
「そうか……そう言えばどんなお姉さんなんだ?」
「そうですね」
士郎の質問に、ティファニアはその白い頬を、手に持つグラスを満たすワインの如き朱に染め上げながら、小首を傾げてみせる。
「綺麗で、優しくて、強くて……わたしの憧れです」
「テファがそこまで言うとは……ふむ、一度会ってみたいな」
「え!?」
「ど、どうしたテファ?」
突然大きな声を上げたティファニアに、士郎が目を丸くする。ティファニアは士郎の視線に気付くと、頬どころか首筋まで真っ赤に染上げた。
「い、いえ、な、何でもありません」
「そ、そうか。しかし、テファがこんな時間まで起きているのは珍しいな? ……何か相談事か?」
「あ、その……はい……」
ティファニアの視線は迷うように揺らいだが、覚悟を決めるかのように一つ大きく頷き、士郎が注いたワインが入ったグラスを一気にあおるとキッと士郎を見上げ―――。
「わたしの胸って変なんですか?」
「……は?」
変なことを口にした。
…………………………………………。
士郎とティファニア、二人の間に沈黙が落ちる。
静まり返った空間に、ティファニアの荒い呼吸音が響く。
「……すまないテファ。どうも耳の調子が悪いようだ。すまないがもう一度聞いてもいいか、何が変だと?」
「えっ……そ、その、む、胸が……わ、わたしの胸が、変じゃないのかな……と……その、変ですか?」
「ああ変だ。君の頭の中が変だ。さあ早く病院に行こう」そう言いたいのが山々だったが、そこをグッと堪えると、士郎は深い―――深い溜め息を一つ着く。
「は〜…〜あ……。その、だなテファ……突然どうした?」
「えっと、ですね。最近アルトの視線が……その」
「セイバーの視線がどうした?」
ティファニアは逡巡するように口を開けては閉じることを何度も繰り返した後、空になったグラスに手ずからワインを満たすと一気に飲み干し、強めにグラスをテーブルに置くと同時に口を開いた。
「わ、わたしの―――を、その……見るんです」
「すまない、よく聞こえなかったんだが?」
「ですから、その……胸を」
「ん?」
ごにょごにょと口元を動かすティファニアに向け、士郎は耳を澄ませる。ティファニアは士郎のそんな様子を見て、勢いをつけるようにワインをグラスに注ぐとまたも一気に飲み干し。
「―――っはぁ……で、ですからアルトがわたしの胸を見るんですっ!」
「……セイバーが……か?」
「は……はい。そ、その、それで最近アルトの視線が痛くて痛くて」
アルコールが身体に回ったのか、恥ずかしさのためか両手で胸を抑えて俯くティファニアに、士郎は引きつった笑
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