第八章 望郷の小夜曲
第六話 変わらないもの
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ウらしいのですが……思えば初めて出会った時も、あなたは瀕死でしたし」
「……そうだな」
目を瞑り、士郎はセイバーと初めて会った時のことを思い出す。ランサーに殺されかける寸前に呼び出したセイバー。その時の美しさは、どれだけ時間が経っても色褪せずに今も目を瞑れば色鮮やかに思い出せる。
セイバーもまた、目を瞑り士郎との初めての出会いの時を思い出す。アレが、全ての始まりだった。
またも静寂が二人の間に流れ、そしてまた、それはセイバーによって崩された。
「……明日ですか」
「ああ」
それだけで、士郎はセイバーが何を言いたいか理解し頷く。
「主の下に……戻るのですね」
セイバーは士郎と同じように木に頭をつけ頭上を仰ぎ見ている。その目はしかし、枝葉の隙間から覗く星空ではなく、士郎から聞かされたルイズという見たことのない少女を見ていた。
「まだ、俺の手が必要だろうからな」
「……必要が無くなればどうしますか」
「さて、どうするか」
笑みを含んだ声を漏らし肩を竦める士郎。
「元の世界に戻る手がかりでも探しますか」
「それもいいかもしれないな。向こうからすれば、黙っていなくなったようなものだし。随分と心配しているだろうからな」
士郎の言葉に、セイバーは直ぐに頭に浮かんだ人物の名前を口にする。
「心配ですか……リンやサクラのことですか?」
「凛と桜かぁ…………帰りたくなくなってきた」
「何があったんですか」
あからさまに気分が沈んだ声を漏らす士郎に、心配気にセイバーが声をかける。
「……色々とあったんだよ……そう……色々と……」
「理由を聞きたいような……聞きたくないような……」
力なく喋る士郎に、セイバーは頬を引きつらせながら唸る。
「出来れば聞いてくれるな」
「―――本当に何があったんですか」
硬い声で懇願する士郎の様子に、流石のセイバーも焦りを隠せなかった。
「はは……はぁ〜……実際人助けで死にかけたことよりも、凛たちの喧嘩に巻き込まれて死にかけたことの方が多いしな」
「全く何をしているんですか……しかし」
「ん?」
「それでも幸せだったようですね」
色々と疲れた声を出す士郎だったが、その声の端々には、優しさが滲んでいた。それに気付かないセイバーであるわけがなく、優しく笑いながら尋ねると、士郎もまた笑いながら頷く。
「まあ、な。色々と滅茶苦茶だったが、確かに幸せだった。辛いことや悲しいことも色々あったが、それでも幸せだったと言える」
三度目の沈黙が流れる。本当に色々あった十年間を思いだし、それでも幸せだったと士郎はハッキリと言えた。セイバーも士郎の言葉に嘘はないと感じ、何処か寂しそうな顔を一瞬浮かべた後、話題
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