第八章 望郷の小夜曲
第六話 変わらないもの
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た人と会えたんだ……出来れば離れたくはない」
「二度と? どういうことだい相棒」
「ま、色々とな……」
小さく溜め息を吐く士郎に、デルフリンガーが優しげに語りかけてくる。
「……離れたくなけりゃ、ここにいりゃいいんじゃねえか?」
「ここにいれば、お前を振る機会が殆んどなくなるぞ」
「朝の稽古に俺を連れて行ってくれりゃ十分だ。あの剣士と戦うのは面白そ―――」
「セイバーの使う剣は、アレだぞ」
デルフリンガーが弾んだ声が、
「―――それだけは勘弁してください」
一瞬にして萎んだ。
「セイバーがアレで斬りかかってきたら、受けた剣ごと斬られるからな。お前なんて一撃で真っ二つだろう」
「……ありゃ反則だろ」
「……鬼に金棒と言うか何と言うか……まともに受けられないからな……反則というかチートだ」
乾いた風と共にハハハと乾いた笑い声が響くが、
「何が反則ですか」
「ッせ、セイバー」
後ろから響いた声に息を飲んだ。
士郎の背後の森の奥からゆっくりと姿を現したのは、デュランダルを士郎が投影した鞘に収め腰に佩いたセイバーであった。セイバーが着ているのは、シミ一つない真っ白なワンピースであり、腰に佩いた長剣が似合うわけがない筈なのだが、何故かしっくりとくるのは身に纏う雰囲気によるものか。
背後の森の中から現れたセイバーは、そのまま士郎が寄りかかる木に向かって歩いていく。
「どうかしたのか? 夕食を食べすぎて腹ごなしに散歩していた……いや違うか」
「待ってくださいシロウ。どうして否定するのですか」
頬を膨らませ下から睨みつけてくるセイバーに、士郎は苦笑いを浮かべながら肩を竦める。
「あれぐらいでセイバーのお腹が限界を超えるわけがないだろ」
「っく……そ、そんなことは……っ」
「く、くくく」
「……笑わないでください」
頬を赤らめ俯くセイバーの様子に士郎が堪えきれないとばかりに笑い出す。セイバーは顔をますます赤くなった顔を背ける。
暫くの間、二人の間に静寂が流れる。
セイバーは無言で歩き出すと、士郎が寄りかかる木の反対側に移動すると、同じように木に寄りかかった。
「シロウは変わりましたね」
「……あれから十年近く経ったからな」
コツンと後ろの木に頭を当て頭上を仰ぎ見る士郎。生い茂る枝葉の隙間から、月明かりが差し込んでくる。
「ええ。ですが、全く変わっていないところもあります」
「……そうか」
「そこは変わって欲しかったのですが」
苦笑を浮かべるセイバー。
二人は同じ木の反対に寄りかかりながら会話を交わし合う。
「もう少し自分のことを大事にしてください。再会が瀕死の状態など……まぁ、らしいと言えばシロ
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