第八章 望郷の小夜曲
第六話 変わらないもの
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は……当たっていたら確実に死んでいたぞ」
「一応当たらないよう投げたんだが」
「当たらなくてもかなり効いたがな……っく」
士郎の言い訳に鋭い眼光を返しながら、アニエスは柄まで地面に突き刺さった黒鍵を引き抜いた。
「貴様の腕が凄いのか、それともこの、け……ん、が……」
「アニエスさん?」
アニエスの声が尻窄みに消えていく。地面から引き抜いた黒鍵を食い入るように見ながら全身を震わしている。士郎が気遣わし気にアニエスに声を掛けると、ハッと気を取り直したアニエスが親の仇でも見るかのような目で士郎を睨みつけた。
「これはお前が投げたのか」
「あ、ああ」
「……これを使う奴は他にいるか」
「いや、いないと思うが。どうかしたのか?」
士郎が訝しげな顔をすると、アニエスはふいと視線を外すとポツリと呟く。
「とすると、あの時のあれはこいつが……」
「アニエスさん?」
士郎が声をかけると、アニエスは返事することなく士郎に黒鍵を投げつけた。
「……まあいい。怪我がないならさっさと行くぞ」
背を向け歩き出すアニエスに、士郎が声をかける。
「行くって何処にだ?」
「決まっている。陛下の所だ」
足を止め振り返り応えるアニエス。士郎は隣に立つセイバーを見て、次に森の奥に視線を向けると、顔を向けて来るアニエスに頭を下げる。
「まあ、そろそろ帰ろうとしていたところだったから別に構わないが。色々世話になった人がいるからせめて挨拶をしてから帰りたいんだが」
「期限は指定されていないが……では何時出発する」
「そうだな……明日でもいいか?」
「別に構わん」
「すまないな」
腕組みして立つアニエスに、士郎は苦笑いしながらお礼を言った。
「まあ、いい機会か……」
夜も更け、丸い双月が空の中天に浮かぶ頃、士郎はウエストウッド村の外れ、森との境で木を背に村を眺めていた。
あの後、アニエスを連れウエストウッド村に戻った士郎は、迎えが来たことをティファニアたちに伝えた。ティファニアは突然のことに手に持っていた物を落としたり、暫くの間呆然とするほど驚いていたが、それでも迎えが来たことに喜びを示し、その日の夕食はお別れ会を担った豪華なものとなった。その際、最初あれだけ警戒していた子供達も泣きながら引きとめようとし、それをティファニアとセイバーが落ち着かせるという一幕もあった。
「もう少し……いや、会おうと思えば何時でも会えるか」
「何でぇ相棒。やっぱり相棒も寂しいんじゃねえか」
「当たり前だ」
腰から聞こえてくる声に、士郎は目を細め俯く。
「……二度と会えないと思ってい
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