十九 最後の舞台
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い息と大人の冷たい声が聞こえてくる。
「どうやら…限界のようだな…。この【影真似】とやらもすぐ解ける…覚悟しておけ!」
ゾクッと横島の背筋が寒くなった。マズイ状況であると遠目からでもよくわかる。
(…アイツは、ナルトの友達なんだ…)
右手に霊能力を注ぎ込みながら、横島は下唇を噛んだ。アカデミーではナルトに友達が出来なかったと火影の記憶が訴えている。表のナルトとしてだろうがそんな彼が一緒に歩いてた相手。今はまだ本当の意味での友達ではないかもしれない。けれど今現在生命の危機に陥っている彼が、いつかナルトを理解し支える存在になるかもしれないのだ。
「…お前の言う通り…どうやら限界だ…」
(おいおいおいっ!なに諦めてんだよ!)
諦念の込められた言葉と共に子どもの影がプツンと切れた。息を荒く繰り返しながら諦観の態度をとる子どもに、横島は内心激昂する。ススス…とゆっくり己の影から離れていく子どもの小さな影を、八人の忍者達は鼻で笑った。
「おい…そろそろ出て来い」
(ヤバイッ!伸びろ伸びろ伸びろっ)
ガサリと木の上で動く気配がして横島は真っ青になる。右手首を左手でぐっと掴んだ。
忍者は子どもにも情け容赦ないのだと、火影の記憶を持つ横島はよく知っている。このままでは子どもが死んでしまう。ナルトの友達が、目の前で殺される。
(……そんな事絶対、やらせるか)
瞳の奥で小さな蛍火がチカチカと瞬く。
ナルトにとって唯一の人間は三代目火影ただひとりだ。横島にとってのルシオラと同じ。
ルシオラに対する想いが恋愛だったのかは未だに横島はわからない。ただ本当に大切な人だったと断言できる。誰にも心のうちを明かさなかった横島が彼女にだけは本音をぶちまけた。ルシオラには本当の自分を見せても大丈夫のような気がした。あの時確かに彼女は横島にとって精神的支えとなってくれていたのだ。
だから自身に好意を素直に向けてくれたルシオラは依存する対象となった。横島の、心の拠り所だった。
道化として演技せねばならぬ舞台から引き摺り下ろしてくれた唯一の女性。
しかしながら、平和になったら彼女に心のうちを曝け出そうと勇気を持った刹那に、彼女は死んだ。
横島は知っている。人は大切なものの最期を迎えると、後に大切なものを失うことに憶病になる事を。
横島は解っている。人は大事なものの死に直面すると、更に大事なものを亡くすことに敏感になる事を。
だからナルトにとって、身を守るすべを身につけさせ、生きる場所をくれた、何があっても変わらずに対応してくれた唯一の人である三代目火影に。もし万が一の事が起こったら。
そしてその時、他に支えてくれる存在がいなかったら。
漠然とした不安に囚われ、横島は頭を振
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