十九 最後の舞台
[1/5]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
白い鳥の羽根が空を舞う。見た目は幻想的な光景だが明らかに幻術のソレに、ナルトはちっと舌打ちした。
(始まったか…)
中忍試験会場。
試合を観戦するために集まった者達が皆すうすうと眠りこけている中、カキンとクナイとクナイの搗ち合う音があちこちで鳴り響く。
ドベを装って試合をなんとか終わらせたナルトは、幻術に掛かったふりをして伏せていた。
火影を連れ去った風影の姿を確認し、飛び出したい衝動を必死で堪える。試験開始前から火影に「手を出すな」と命令されていたナルトは歯痒い思いを抱えていた。
火影は知っている。ハヤテの証言を踏まえナルトが掻き集めた情報により、今の風影が大蛇丸の変化した姿だとも、木ノ葉崩しの筋書きも大まかにわかっている。
けれど彼は元教え子だからこそ大蛇丸と正面切って対峙すると言う。暗部総隊長として新人暗部を鍛える事もあるのでその気持ちは解らなくもないが、なによりその固い覚悟に水を差す事がナルトには出来なかった。
(じじい……)
試験会場の屋根で風影の羽織を羽織った男となにやら会話している火影。それを目の端に捉えたナルトは人知れず下唇を噛んだ。心を落ち着かせようと、思わず木の葉の額宛を押し上げる。
その途端、バンダナをつけている昨日までの同居人の姿がナルトの脳裏に浮かび上がった。
(……帰ったのだろうか……)
ちくりと痛む胸を抑え、これでよかったのだと自分自身を納得させる。
昨晩、横島――監視対象を逃がしたとナルトは三代目火影に報告しに行った。どんな罰でも受ける覚悟はあったが、彼はただ「そうか」という一言だけ口にした。悄然とした顔つきをした火影の顔を忘れることができない。
脳裏に浮かぶのは横島を最後に見た、昨日の黄昏時。
最初はただの監視対象だった。
火影の命だから仕方なく彼をアパートに連れ帰ったのだが、すぐ逃げると思って金を用意した。それでも未だアパートにいたその意図を探るため泳がしておいた。木ノ葉崩しを企む忍び達がいるくらいだから他にも何か陰謀が隠されているのではないかと疑ったのである。
横島の記憶を見ても全てを信じ切れたわけではなかった。記憶を操作する術もあるため、心の奥では本当に彼が信用できる人間か解らなかった。しかし何の変化も見えずそのままずるずると一緒に過ごし、そして彼の全身の傷痕を見てようやくナルトは横島の心理が窺い知れた。頑なに道化を被る彼に親近感が湧いたのかもしれない。
そして荒らされたアパートを自分の事のように憤慨した横島を、死なせたくないと切実に思った。こんな忍びの世界に捲き込んでいい人じゃないと。
だからわざとつき放して、それでも渋る横島をせめて里から逃がそうとしたのだ。
抜け忍ならともかく見た目一般人
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ