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王道を走れば:幻想にて
第四章、その8の2:迫る脅威
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これで十分美味しいのだが、御主人自ら御褒美をくれた方がーーー』」
「わあああああっ!!!」

 背後からの大声にユミルの背が震える。何時の間にかパウリナが帰還しているようであった。彼女は酷く赤らんだ顔をしながら鷹のような速さで日記帳を奪い、胸に抱えながらユミルを睨みつけた。

「ど、どどどど何処まで見たんですか!?この変態!?」
「睨み合い六日目の辺りまでだ。ついでに言うが俺は変態ではない。女に無理強いをさせた事は一度もないからな」
「うっさい!変態かどうかは相手の主観から判断されるんですよ!乙女の純情を覗き込んで!この変態!!」
「傍若無人な・・・それにパウリナ、お前乙女と自称するような歳じゃーーー」

 返答の代わりに蹴りが飛んでくる。言い過ぎてしまったと後悔しながらユミルはそれを甘んじて腹で受け止めた。身体能力が取り柄なだけに鋭いものであったが威力は無かった。
 一度蹴って幾分か怒りを飲み込んだのか、パウリナは不満げな顔をしながら自分の寝台に座り込んで、水差しから温い水をコップに注いで飲み込む。

「それで、敵の動きは?」「はぁ・・・動きなんてありませんよ。墓石みたいにぴくりとも動きません」
「不思議だな。食料に切羽詰まっていると思っていたのだが。・・・そういえば、東の村が襲われたのだったな。だとすれば、そこから奪った食料で食い繋いでいるのか?」
「そうでなきゃ馬肉か人肉でも食ってますよ。経験談です」
「・・・お前、人の肉を・・・?」
「あっ、違います!私の知り合いの経験談です!もう死んじゃいましたけど、そいつ何もない状態なのに人肉で一か月は生き延びたって言ってましたから!私は食ってませんからね!?」

 念を押してパウリナは言う。流石に元狩人であるユミルにとっても人肉を食らう真似はした事が無い。もし仲間内の誰かがそれをしたら嫌悪感でまともに顔を見れなくなる所であった。
 パウリナは思い出したように付け加える。

「あと敵の数なんですけどね、ちょっと接近して数え直してみたら、報告以上の数になっていましたよ?ざっと500は超えてました」
「お、お前っ、賊に不用意に近づくなと言っただろう!?なんでそんな危険な真似をした!?」
「だって私にはこれしかありませんから。申し訳ないです、頭も武も大して使い物にならなくて」

 身体を反転させてパウリナは壁を向く。表情の窺えぬ彼女を見詰めていると、不意にパウリナの方から言葉が掛けられた。  

「御主人。私、人を殺すのは嫌です」
「・・・そういえば血を見るのも嫌だったな。・・・どうして嫌なのか、聞いても大丈夫か?」
「・・・人殺しの経験が無い訳じゃ無いんです。ただ、嫌悪感というか・・・ぞっとする気分になって・・・」

 深い溜息を混じらせながら彼女は自虐
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