第一章 グレンダン編
道化師は手の中で踊る
別れは唐突に
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はしなかったが体勢を崩す。
そこにルイメイの手が伸び、老生体の鱗を破壊しながら肉に食い込む。
そのまま圧倒的な筋力で、上に持ち上げられた老生体は体の異変に気づく。腕が、足が動かないのだ。
何事かと思った瞬間、老生体は自身の体が大きく膨れ上がっているのに気づいた。そして、爆発した。周囲を巻き込み、老生体の肉片が飛び散る。
煙が巻き起こるが、鉄球を引き戻した時に風が発生し、煙が晴れる。
そこには傷一つない、リヴァースとルイメイの姿があった。よく見ると、リヴァースがルイメイの盾になって爆発から守っていた。そうしなくてもルイメイなら平気なのだが。
「おいおい、ここまで守ってもらわなくてもいいんだぜ?」
「ダメだよ、ルイメイ。君はもうお父さんなんだから」
その一言でルイメイは何も言えなくなる。
暴れん坊でいい加減なルイメイだが、こと子供や孤児のことになると人一倍心配をするようになった。これも、ルシャやシキのおかげである。
照れくさそうに頬を掻くルイメイに、リヴァースは笑う。
「たく……俺も甘くなったもんだ」
「いい事だと思うよ? あっ、今度ティアと一緒に見に行ってもいい?」
「あぁ、もちろんだ。その代わり、お前らの子供見せろよ?」
今度はリヴァースが頬を掻く番だった。
リヴァース・イージナス・エルメン、彼は天剣の中で一番弱く、同時に一番強い存在である。
「久々の戦闘じゃな」
『そうですねぇ、無茶だけはしないでくださいよ? ただでさえ歳で剄脈に負担がかかるんですから』
「お前が言うな。お前もいい加減引退したらどうじゃ?」
『後継者が現れないもので……お互いいい歳ですしね』
ティグリスは呑気にそんな会話をしている。会話だけ見ると、仲の良い老人がしゃべっているように思えるが、実際は巨大な矢を持った老人が二百メルほど先の目標に、矢を正確に撃っている。
まるで機械のように正確な射撃だが、それは長年の経験と訓練の賜物である。
「シキの方はどうじゃ? この程度ならやられることはあるまい」
『ええ、今のところは優勢ですよ? ただ、上昇した剄に振り回されてますね』
「また上がったのか、あやつは」
そうため息をつきつつ、ティグリスの矢は老生体の右腕を射抜いた。綺麗な風穴が空いた老生体だが、瞬時に再生してしまう。
「ふむ、回復速度はいつも通りじゃな」
『むしろ遅いですね。人型になったために能力が落ちたんでしょうか?』
「知らん。しかし、気に入らんな。十年前のあの老生体と同じとは」
いつもなら優しげな瞳が、険しいものに変わる。
苦い記憶を思い出させる、老生体に少々イラついているのだ。心なしか、矢の速度が上がった気がする。
デルボネはそんなティグリスを見てコロコロと笑う。
『若いですね、この
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