第一章 グレンダン編
道化師は手の中で踊る
別れは唐突に
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デルボネは困ったように言うが、この時のレイフォンは深く考えずにこう言った。
「大丈夫ですよ、シキは帰ってきます」
だが、シキが帰ってくることはなかった。
「……んっ?」
ガタン、と大きな振動がしてシキはゆっくりと目を開けた。
頭にモヤがかかったように動きが鈍い。試しに手を動かそうとするが、こちらも動きはするが反応が鈍かった。
どうやら、シキは備え付けれた席に座っているようだ。周りには似たような席があった。
「起きたか、シキ」
シキは声のした方を向く。
そこには窓際でくつろぐ、一匹の黒猫が座っていた。中々、上品そうな猫で撫でたらさぞ気持ちよそうだな、と思った。、
「小さい頃から女っぽかったのか。どうしたらあんたみたいな人間が生まれるのか、興味あるね」
知るか、とシキは思う。
猫は小さくあくびをしながら、シキの席に音もなく降り立つ。
「さて、無理やり連れて来てすまないね。初めまし……いえ、わたしにとっては『久しぶり』、シキ」
「だ、れ?」
何故か舌っ足らずな口調になっているが、今のシキはとにかく脱力していた。
クラリーベル辺りが見ていたら、顔をプニプニと触っていたことだろう。
現に猫は、プニプニと肉球でシキのほっぺを触っていた。爪を立てていないので、ヒンヤリとした肉球が心地いい。
「今は休むといい。一晩寝れば、剄がコントロール出来てるさ。……まったく、異民でもないのに、素で少量のオーロラ粒子取り込んで強くなってればコントロール出来るはずがない」
「な、んの、こと?」
「わかりづらいのか? って、今のあんたは十歳だったね。理解できなくて当然というワケだ」
猫は一人納得したように首を振る。
シキは何がなんだかわからないが、何もわからないことだけは理解した。こういう頭を使う作業は大嫌いだからだ。
「じゃあ、ここからは一人事だよ、シキ。あんたは今、放浪バスに乗ってる。行き先は交通都市ヨルテム」
「……はっ?」
シキの視界が一気にクリアになる。
目を見開いて、身体を起き上がらせると今まで動いていなかった頭が一気に動き出す。
広々とした室内に、複数の乗客用の席、そして窓から見える汚染された大地、極めつけは窓から見える大地を走るためのバッタのような足、見たことしかないがそれが放浪バスと呼ばれる、汚染された大地で唯一都市同士を結び付けられる手段だと理解した。
「なんで? 確か、俺は」
「あらま、鎮静剤を致死量まで打ったはずだが、起き上がるとは凄いじゃないか」
猫は後ろ足で頭を掻きながらとんでもないことを言う。
そんな物を打たれたら、いくらシキでも死ぬ可能性があっただろう。しかし猫は庭先でお茶でも飲んでいるかのように、穏やかに言った。
「拉致か……いや、あの時は戦闘中
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