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愛しのヤクザ
第十三章 罠
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肉弾戦なら包丁持ってる方が強い。でも情報戦では包丁は何の役にも立たない。奴らはやりたい放題だ。うちの連中もそうとうかりかり来ている」
「そりゃそうでしょう。今度の厨房へのオーダー係り、鎌田副支配人がやってるでしょう。あの人も管理職だってのに何考えているんだ。いや、いや、そんなことどうでもいいけど、鎌田の嫌みは相当ひどいって話ですね?」
「ああ、俺がいるときは普通にオーダーを入れてるけど、いない時なんか、ひどいらしい」
相沢が頷きながら言った。
「辞めるのを待っているんです。みんなが怒って辞表を叩きつけるのを期待しているんですよ。調理長、絶対に挑発にのっては駄目ですよ」
「ああ、俺は腹を括ってる。問題は若い連中だ。特に三番手の荒井がいつ爆発するか心配なんだ。よく言って聞かせてるけど、あいつは怒ると怖い」
「あのおとなしい荒井さんが爆発する?」
相沢がすっとんきょうな声をあげた。調理長がにやにやしながら答えた。
「あいつは本来であれば二番手でもおかしくない腕を持っているし、それなりの修行も積んでる、でも、あいつは一度抜けているんだ。5年ほど、遊んだ」
林田が聞く。
「遊んだって、何して遊んでたんです?」
石塚は二人を見ながらにやにやしている。言っていいものか迷っている。凝視する二人に促され、まあいいかといった具合で口を開いた。
「君たちの嫌いなヤクザ。組に入っていたんだ。奴だけ長髪を許してるのは、当時、髪も眉毛も剃ってたから人相を変えさせている。組から逃げてきた。頼られたら、昔の可愛い弟子だ、断る訳にはいかない」
二人は意外な話に顔を見合わせ、あの荒井さんが…と絶句した。石塚が慌てて付け足した。
「そうそう、君たちがもう一つ嫌ってる入れ墨はしてないから安心して」
その言葉を聞いた瞬間、相沢の脳裏に閃きが走った。口を開け、じっと一点を見つめる。林田が怪訝そうに聞く。
「課長、何、思いついたん?その顔は何か閃いて、それを、どうやらかすか考えているって顔だ」
罠だった。罠を思いついたのだ。敵が乗ってくれば一挙に挽回できるかもしれない。憎々しげな眼差しを送ってきた山本の鼻を明かすことが出来る。実に良いアイデアだった。石塚と林田を交互に見て、相沢が口を開いた。
「情報戦に勝てるアイデアを思いつきました。ちょっと聞いてくれますか。汚い手だけど、相手はもっと汚い。それだったら、おあいこだと思うんです」
二人の目が輝いた。林田が答える。
「汚いって、結構じゃないですか。やられる前にやる。男同士の争いに汚いも糞もあるもんですか」
相沢が声を低めて二人に説明する。
「実はですね、荒井さんより、内村さんの方がよっぽどヤクザっぽいでしょう。だったら内村さんを元ヤクザにしたらいいじゃないですか。内村さん、この間聞いたら、いつも長袖なのは冷房が駄
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