暁 〜小説投稿サイト〜
真・恋姫無双 矛盾の真実 最強の矛と無敵の盾
黄巾の章
第20話 「貴方は、悲しみを背負う……ただの『人間(ひと)』なのだから」
[6/7]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
ね……)

 心の中で懺悔しながら、彼の見開いた眼を、そっと閉じる。
 そして、彼の首を彼の身体の上に、そっと置いたときだった。

「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」

 !?
 あの声は……盾二さん!?

 まさか……あの無敵の盾二さんが、叫んでいる。
 そういえば……この子の弟がいない?
 まさか!?

 私は、乱れた服の切れ端を持ったまま、その場から駆け出した。

(お願い……無事でいて!)

 無事で……どっちが?
 ううん。どっちもに、決まってる!

 ほとんど半裸の姿で血溜まりの中を走る。
 と、厩の傍で彼の姿を見つけた。
 その目の前には、子供がいて笑っている。

 生きている……よかった。
 助けることができたんだ。

「ごしゅ……」

 声を掛けようとして、唐突に気付いた。
 その異様な殺気に。

 盾二さんじゃない。
 あれは……誰?

 ううん。
 彼は紛れもなく盾二さんのはず。

 でも、その目はなんの意思も宿ってなく。
 ただあるのは、純粋な殺意だけ。

 その彼は、無表情のままその場に立ち。
 腰につけた短刀を引き抜き。

 目の前で笑う子供に向けて――
 
「やめてぇぇぇぇぇぇっ!」

 私の叫びに、ビクッと身体を振るわせた。
 そして、ゆっくりとこちらを振り返る。

 その眼は、まだ無機質だけど……短刀を持つ手が微妙に揺れている。

 だけど、その手が再び上に掲げられ――

 その瞬間、私は走り出して、壊れたように笑う子供に抱きつく。
 それと同時に、私の右腕に振り下ろされた短刀の刃が掠めた。

「ぐうっ!」

 抱きついたまま、ゴロゴロと転げて、馬が繋いである厩の木に背中が当たる。
 肺の中の空気が強制的に外に押し出され、ゴホゴホとむせこんだ。
 そして顔を上げる。

 私は子供を抱きしめたまま、彼を見た。

「あ……ああ……」

 盾二さんは……身体を震わせ、顔を歪ませて……何かを堪えている。

 なにかに……なにに?

「……ごしゅじん、さま。もうおわったん、だよ?」

 私は子供を放し、刃が掠めた腕を押さえながら立ち上がる。
 その腕は痛みはなく、ただ熱い。

「あ……あ……ああ……」

 盾二さんは……身体の震えを激しくしながら、再度短刀を掲げようとしている。

 何かと戦っている?
 いったい、なにと?

「もう、敵はいないよ? もう、終わったんだよ……?」

 私は、傷を押さえていた手を放して……腕を広げる。

 この人は……常に戦い続けている。
 何のために? 誰のために?

「あ……ああ……」


[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ