黄巾の章
第20話 「貴方は、悲しみを背負う……ただの『人間(ひと)』なのだから」
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った、その瞬間だった。
ゾワリ。
魔人の殺気が膨れ上がる。
その殺気は、目に見えるほどドス黒い塊のように感じた。
「ヒヒィッンッ!」
「げふっ!」
魔人の殺気に恐慌した馬が首を振り、その手綱から手が放れた瞬間、馬の後ろ足に蹴り飛ばされる。
右肩を蹴られた俺は、剣と子供を取り落として、地面に転がった。
「ぐっ……つつ、この、駄馬、めぇ……」
俺が悪態をつこうとして、その背後の人影に血の気が失せる。
背後に誰がいるか。
そんなことは明白だった。
し、死ぬ――
「な、なあ、助け――」
俺が言葉とともに振り返ろうとして。
地面と空が逆さまに動いているのに疑問を持つ。
(あ、あべ?)
ぐるりと回る視界の中。
声を出そうとしても肺がなく。
手を動かそうとしても胴体がない。
俺の顎が地面に落ちると同時に。
迫ってきた黒い魔人の足の裏が、俺が最後に見たものだった。
―― 盾二 side ――
……
…………
………………
……あ?
俺……あれ?
何で俺は、ここに……
俺が気がつくと、目の前に誰かの死体があった。
だれだ……?
いや、待て。
だれだ、じゃない。
ちゃんと覚えている。
覚えてはいるが……俺が、やったんだ。
俺がやった……やったけど、なんだ?
俺がまるで俺じゃないような……
いや、違う。
俺が……殺った。
俺が……殺したんだ。
俺は周囲を見回す。
邑は焼けただれ、黄巾のほとんどは殺した。
だが、周囲には邑人の死体もある。
俺が潜入する前のもあるが……ついさっき殺されたような痕もあった。
逃げる黄巾の被害にあった人も多いのだろう。
何故こんな……愚策をしたんだ、俺は。
彼女の存在を見つけて……密かに助け出して、穏便に彼女と邑を救うはずだった。
だけど……そうだ。
あの時……あの男が、桃香を犯そうとして。
それを見た瞬間、何もかもが紅く染まって……
…… ザッ ……
なんだ?
…… ザザッ ……
頭が……痛い。
…… ザッ …… 逃げ …… ザッ ……
なにか、なにかを、思い出し……
…… ザザッ …… ろせ …… ザッ ……
ぐっ……
俺は頭を振って、額を押さえる。
痛みで、そのイメージはふっ、と霧散した。
(なにかを……思い出せそうだった。けど……なんだ?)
痛む頭を押さえつつ、顔をあげると、馬の傍に子供が倒れている。
なにかをブツブツ喋ってい
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