黄巾の章
第20話 「貴方は、悲しみを背負う……ただの『人間(ひと)』なのだから」
[2/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
怖くて動けなかった。
今もお兄ちゃんの身体を握って、震えていることしかできない。
でも、お兄ちゃんがいてくれれば大丈夫。
お兄ちゃんが、僕を守ってくれる。
そう、お兄ちゃんが……
あれ?
お兄ちゃん?
なんで……
なんで血が流れて……
僕は……
そのとき、お兄ちゃんに見るなって言われたのに……
眼を開けて……顔をあげちゃったんだ。
だから……だからきっと、バチが当たったんだ。
お兄ちゃんの言うことを聞かないから……
だから……
お兄ちゃんの……頭が、あたまが。
あタマ、アタマ、アタマアタマアタマアタマアタマ……
アタマガ……ナイヨ?
「……ァ……ァ……アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!?」
―― 劉備 side ――
――声が、聞こえた。
誰かの声。
誰かの……小さな子供の、声?
その声に、次第に周りの視界が鮮明に映りだす。
ここは……
身体を起こそうとして――
ピチャッ!
周囲の血溜まりに手をついた。
「な……なに、これ?」
手に真っ赤な塗料。
ううん。
鮮血の水溜りだった。
その事実に頭が追いつかず、呆然と周囲を見る。
周囲はまさに、生物の……人を虐殺した光景だった。
「うっ……げっ……」
人の死には慣れていたはずの私。
でも、この人であったモノの……大量の、人の残骸でしかないモノに周囲を囲まれている状況に。
傍にだれかの目玉と、砕けた頭蓋を見た瞬間。
生理的な本能のままに、嘔吐した。
「はあ、はあ、はあ……」
吐瀉物と涎と鼻水と涙で汚れた、顔。
それを拭おうとして……自分の姿に気付く。
私の服は、無残に引き裂かれて下着すら履いていない。
服の残骸で口と鼻を拭くと、もう一度顔をあげた。
……あたりは火と血と肉片、それに砕かれた剣や槍が突き刺さっている。
(戦闘の、あと……?)
激しく気分が悪いまま、私は立ち上がる。
そして、周囲をぐるりと見回して、数歩歩いたときだった。
コツ、と足元に当たる、だれかの遺体。
私は、それを見下ろして……
膝が崩れた。
「あ……あ……あ……」
それは、私が守ろうとしたモノ。
私が守ろうとした……子供の生首、だった。
―― 孫策 side ――
「そ、孫策様! なにをそんなに急いでおられるのですか!」
董卓
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ