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或る皇国将校の回想録
第二部まつりごとの季節
第四十一話 さぁ、仕上げを御覧じろ
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すら吹っ飛んでしまっていた
「まぁ、不確定情報だが早期に知ることが出来ただけ、統帥部に伝手を作った甲斐があったのだと思おう。――まったく、来ると分かっていても嫌になる」
 豊久は文字通り頭を抱え、嘆く。
 ――あぁ、畜生。またまた北領の時並みの嫌な予感がするし――泣きたくなってきた。
「聯隊長殿、明日から即応態勢へ移行しますか?」米山が如才なく尋ねる。

「あぁ、頼む。申し訳ないが明日から休養時の兵達は営所で待機してもらおう。当面、街には出してやれないな」 と聯隊長は僅かに微笑した。
「それと、伝達が済んだら導術士を頼む。一応、鎮台司令部に問い合わせと云う形で伝えておきたい」

「はい、聯隊長殿」
米山と敬礼を交わすと即座に聯隊長は首席幕僚に問いかける。
「大辺。即座に龍州軍の増援に出られるのは皇都に集結している三個鎮台(駒州・護州・皇州都護)と港湾都市の多い背州鎮台。それに東州に集結している東州鎮台、か?」
 聯隊長の問いに元戦務課参謀は、如才無く返事をする。
「はい、聯隊長殿。現在即応できるのはその五個鎮台です。ですが、それに加えて西州鎮台も後備の動員の為司令部はうごいておりませんが常備部隊の大半を兵団として内地に送っています。こちらはまだ皇都に到着していませんが港を使えば龍州に急行できる状態です。
事実上、〈皇国〉陸軍主力の全軍を投入可能な状態だと考えていただいて構いません」

「成程な、父上も残業が増えるわけだ。――却説、今度は我々が苦労せねばならないな、首席幕僚」
――後方で苦労したぶん、流される血は〈帝国〉産の物にしなければならない。
天狼の大敗をその目で見届けた馬堂豊久聯隊長は静かな決意を込めて云った。
「はい、聯隊長殿。その為にも出征が決定するまでは訓練を――」と、丁度その時に扉を叩く音がした。

「聯隊長殿。本部附導術士、上砂少尉入ります。」
 上砂少尉は輝く銀盤が似合わない未だ十代で当然ながら実戦未経験の新品少尉だ。
戦闘導術中隊に選抜されたのだが、流石に経験不足である為、聯隊本部付となった。
本部の中では一番年下の将校であり、また実戦を経験していない将校はこの部隊では殆ど見かけない為、良くも悪くも目立っている。
 元々、駒州軍は虎城周辺に巣食う匪賊討伐で実戦経験を積んでいる者が多く、その中でもこの聯隊は戦力化を急ぐ為に実戦経験者の将校を最優先で配属させている。
 だが導術将校となると新設兵科の為、数が少なく、後方支援が殆どなので実戦経験者も数少ない。前線に出てくる導術将校となると体力・術力が高い若者の割合が高いのである。

「あぁ、粟津の司令部と交信を頼みたい」
 聯隊長直々の命令に少尉は未だ十代らしく幼さの残る面持ちを緊張させて頷く。
目を閉じ、意識を集中させる少尉を視界の端
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