十四話
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が足りず、お金があれば手に入るとは限らなかったけど、そう思いました。僕には武芸しかなかったから、必死で鍛えました。少しでもお金を稼ぐように、少しでも孤児院が楽になる様に。もう二度と、何も出来ないままなのが嫌だったんです。武芸者だからと優遇されていた結果が、意味が欲しかった」
知らず知らずの内に左手に力が入っているのか、レイフォンの右手の包帯が赤く染まって来ているのが見える
レイフォンのその思いが分からない。自分にとって武芸とは武芸者である以上当たり前のこと。生きるためにしようなんて思ったことなんてない
((やはり私は、何も知らないんだ))
そんな現実なんて知らない。与えられた幸福しか自分は知らない。そんな自分が嫌だ
(世界が知りたい。外に出られない檻の中の鳥みたいにいるのは嫌だ)
「だから、僕にとっては武芸は神聖なものでは無く、お金を得るための手段でしかありません。誇りではお腹は膨れません」
今の、何も知らない自分では理解は出来ても賛同など出来ない言葉。外を知らない自分にとって、それは今までの教えの否定だから
だからそれが知りたい。やはり自分は、どうしようもなく外の世界が見たい
気付けば、ニーナの渦巻いていた胸の痛みはもうなくなっていた。ぶれていた気持ちがストンと落ち、静かに収まったように思える
(ああ、そうだ。もう迷いなどしない。???私は、外の世界を見たい)
レイフォンの在り方を理解し、明確な意思が自分の中で出来たのをニーナは感じる
気付けば話は今ので終わりらしく、レイフォンの無表情が段々といつも通りの緩い表情に戻っていくのがニーナには見て取れた
「今のが僕の理由ですけど……これでよかったんですか?」
「ああ。それと済まない。辛い過去だろうに、無理に聞いてしまったな」
「……なんというか、凄い過去だね。正直予想を超えていたよ。なんかゴメン」
「あ、いえ、気にしないで下さい。僕も聞いてもらって、気が少し軽くなったような気がします」
「そう言って貰えると助かる。……にしても、武芸が金を得るための手段、か。そんな言葉初めて聞いたな」
「そんなに変ですか?」
「最初に、お前がこの都市に来た理由を聞いた時は怒りを抱いた。武芸者の力は神聖なものだと教えられて来たからな。……今でも、金の為に使うという事には賛同できない。だが、お前の話を聞いて否定する言葉を出すには私は世界を知らなすぎる」
それを聞き、レイフォンは特に表情も変えず、いつも通りの締まらない顔で同意の言葉を返す
「やっぱり、良くは思われないですよね〜」
「一般的に見ればな。だが、私にはどうとも言えん」
「まあ、今の話を聞けばそうだよね。生きるか死ぬかの話だもん。……それと、いつものニーナに戻ったね」
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