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鋼殻のレギオス IFの物語
十四話
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知らされなかった
 今、聞いているはずの二人がどうなのかが上手く認識できない

「弟たちに僕の食べ物を分けようとしたこともあります。武芸者なのだから人に分け与えず、その身を維持するようにしろと咎められました。
お腹を空かす兄弟がいる中、武芸者だからと優先的に、弟たちよりも多く配給される食べ物を受け取り食べました」

 羨ましそうに見る弟たちの眼を覚えている
 食事をする中、その眼を意識しないようにと必死でただ飲み込んだのを覚えている
 言葉が止まらずに口から出ていく。もしかしたら誰かに聞いて欲しかったのかもしれない
 今流れている音が話している言葉なのかも、それとも意識の中だけだと思っている言葉も一緒に口から流れているのか、その境界が分からない

「孤児院の外でも、足りない食べ物を争う暴動がよく起こりました。近所に住んでいた面識のあった老夫婦が、ある日死んだことを告げられることもありました」

 自分の周りの変化が怖かった
 眠る前、明日が今日と変わらないようにと何度も祈り、目が覚めて現実を突きつけられることが何度もあった

「……一番苦しかった半年を過ぎて少しずつ持ち直して、暫くして流通が再開した時にはまだ物価が高かったんです。もうあんな思いをするのが嫌だったんです。……お金がたくさんあれば少しは楽になった! 食べ物を買えた!! ……都市全体で食べ物が足りず、お金があれば手に入るとは限らなかったけど、そう思いました。僕には武芸しかなかったから、必死で鍛えました。少しでもお金を稼ぐように、少しでも孤児院が楽になる様に。もう二度と、何も出来ないままなのが嫌だったんです」

 何も出来ないままに周りが変わっていく無力感がどうしようもなく怖かった。武芸者だからと優遇されていた結果が欲しかった。そのことに意味が欲しかった。家族を守りたかった
 生きるためにはお金が必要だと刻み込まれた

「だから、僕にとっては武芸は神聖なものでは無く、お金を得るための手段でしかありません。誇りではお腹は膨れません」

 言うべきことを終え、レイフォンの意識が過去から今へと戻ってくる。目の前の景色が、写真から現実へと、モノクロからカラーへと意識の上で変わっていく
 思うがままに話したおかげか、レイフォンは昔のことを思う際の気持ちが少し落ち着いたようにも感じられる
 そんなことを思う中、聞いていた二人は声を出せずにいた








 学園都市への試験を受けた時も小さな痛みはあった。だが、その時は自分の思いがそれを塗りつぶしていた
 時間が経つにつれ、少しずつ自分の中の違和感として育っていった
 その発端はきっと、ずっと前に聞いたレイフォンの、この都市に来た理由があったから。明確に自覚したのは、数週間前に会った大祖
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