十四話
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その理由を……」
「ニーナ……君は……」
ハーレイが何か気づいたように呟くが、何に気づいたのか分からない
ニーナの迷いが何なのか、理解できない
問われた言葉で思うのは過去のこと。浮かび上がる光景は未だ消えぬ心の傷
ただそれを思うだけで感情が薄れるのが理解できる。表情が抜けていくのが感じられる
「……確かにあります。僕がお金を意識するようになった事が」
「失礼なことだとは分かる……だが、教えてくれないか……?」
「言うのは別にかまいません。けど、つまらない話ですよ?」
「……頼む」
「え、いいのレイフォン? 別に気にしなくても……」
「いえ、もう過ぎたことですし。言う分には特には……」
ハーレイの言葉に構わないという返事を返し、過去のことを思い返す
言葉を紡ごうと開いた口は一度躊躇い、そして音を発し始めた
「数年前、グレンダンで食糧危機がありました」
「食糧、危機?」
「ええ……何でも、生産プラントで家畜に原因不明の病気が流行ったらしく、食糧の生産力が一気に落ちたんです。食べ物が足りなくなりました」
表情が消えていくのが分かる。意識が今でなく昔に飛び、言葉を聞いて驚いている二人の姿を、写真を眺めているような気にしかなれない
言葉が只々流れ、まるで別個の意思を持ったようにすら思え言葉がただの音の連なりにしか聞こえない
「食糧が配給制になって、それでも無理があって、たくさんの餓死者が出ました………元々裕福じゃなかった僕の孤児院でも死にました」
全ての都市は自給自足が成り立っている。緊急の際に他の都市から食料を輸送してもらうという事が事実上不可能な以上、そうでなければ不完全で、滅びるしかない
だからこそ、そういった事故の際は対処が難しい。不可能ともいえる
その時のことは今でも思い出せる
「いつも、僕が寝坊すると跳び乗って起こしてくれる弟の重さが段々と軽くなっていきました」
そしてある日、寝坊したままの日が来た
穏やかな目覚めの違和感が怖かった。眠気を残したまま、微睡の中眼を開いたあの日のことは覚えている
「寒い夜一緒に毛布にくるまった弟が、傍に居たはずなのに、朝目が覚めたら体が冷たかったんです」
寝坊したのだと思って何度も声を掛けた
眠った顔のまま養父の腕に運ばれていった後の、その日だけ一人分量が増えた食べ物の味は覚えていない
「どうしようもない状況になって、妹の一人が別の孤児院に引き取られていきました。別れる日、ずっとこっちを睨んでいたのを覚えています」
眼を見るのが怖くて下を向いた
憎まれているんじゃないかとしばらくの間、人の眼を見るのが怖かった。引き取られていった孤児院がどうなったのかは
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