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トリックスター
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 バンッ

「鳴海ーー!!温室から無断で鞭豆盗ったのお前かーー!! 」

 よほど怒っているのかでかい音を立てて入って来た教師は蜜柑を見るなり謝った。

「すまん、人違いだ」

 謝ると今度は静かに扉を閉めて出て行った。

「何やったんや。今の」

『あいつは植物作りのアリスを持ってるからな。杏樹がさっき使ってたむち豆のことで話が有ったんだろう』

「あっ、そういえば鳴海先生のアリス聞くの忘れてた! 」

『杏樹のアリスはフェロモン体質で使った相手を男女を問わず自分の虜にすることができる』

「お父さん鳴海先生と知り合いなん? 」

『俺が生前、担任をした生徒の一人だ』

「へえ、じゃあお父さんのこと知ったら喜びはるやろか」

『俺のことは黙っててくれないか』

「良いけど何で? 」

『それは・・・』

 ヒュッ…

「え。」

『!? 蜜柑!? 』

 棗にいきなり引っ張られて宙に浮く蜜柑。

「わ・・・! 」

「5秒で答えろ。答えなかったら、この髪燃やす。お前何者だ。」

「……っ」

『蜜柑、変わるぞ』

 体の主導権を入れ替えたことにより雰囲気か一変する蜜柑。

「1? 」

 棗はいきなり蜜柑が殺気を放ったことに驚いて声も出ない。 

 このままこう着状態が続くかと思われたその時、ガシャンッと窓が割れ、乃木が飛び込んで来た。

「…てぇ」

「遅かったじゃん。流架」

「誰のせいだと思ってんだよ。棗」

助けに来てやったのにー、と体についたガラスの破片を払いながら言う。そこで初めて蜜柑に気づいたようだ。

「何してんの? それ誰? 」

「起きたらいた。しかも問い詰めたら殺気を放ちやがった」

 バンッと扉が開き、鳴海と岬先生が入ってくる。

「大丈夫!? 蜜柑ちゃん! 」

「棗っ、流架!! 」

棗が離れた瞬間、わー!と鳴海に抱きつく蜜柑。よしよし、と頭を撫でていたら棗が窓から出ていこうとしていた。手には水玉模様のパンツを持っている。

「じゃあな"水玉パンツ"」


「うぅおぉ!ウチもうお嫁に行けへん〜」

『あの野郎? 』

「パンツ脱がされたくらいたいしたことないってー。それに、その時は棗に責任とらせるから」

「いや、大したことだろう…」

「蜜柑ちゃん、はい」

 鳴海がピラと二人の前に出したのは学園の制服。赤のチェック柄のスカート、黒と白のセーラー。

「これ制服。泣いてる顔は蜜柑ちゃんには似合わないよ」
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