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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第65話 魔眼の邪神
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いていたのだ。

 刹那、顕現してから今まで、何の目的もなく、ただ、ウネウネと冒涜的に蠢くだけで有った無数の触手が、その瞬間に明確な意志の元に統一された動きを開始する。一直線に伸ばされたそれが、大地を、ガリアの空中戦艦を、そして、この世界そのものを穢して行くかのようで有った。
 それは……そう。完全に物言わぬ存在と成ったガリア両用艦隊所属の船乗りたちを、大地に根を張る緑を、そして、逃げ遅れた森の生命たちを見境なく空中へと巻き上げ、その肉に穴を穿ち、獲物たちを貪り始めたのだ。
 悲鳴すら上げる事もなく、ただ、触手たちに因って持ち上げられ、そして、触手と共に、魔眼の邪神の身体の中へと消えて行くガリア海軍軍人たち。おそらく、彼らは既に絶命している。
 冒涜的な。そう、例え操られた結果、邪神召喚の贄とされ、生命を散らされた人間だったとしても、その人間たちの亡骸をこのような邪神の贄に――。

 うっすらと粘液を帯びたその触手は黒き闇を纏い、その表面は月の光を反射して蒼く輝き、そして、絶えず何かの文様が浮かんでは消えていた。
 いや、今のヤツ自身は蒼穹に浮かぶ瞳と触手と言う形態を維持しては居ますが、本来、ヤツには定まった形など存在してはいないはずです。

 何故ならば、召喚に使用された存在が、ギアスと言う魔眼に因る呪を使用した為に、あの姿を取る事となった可能性が高いと思いますから。
 呼び出す為に使用された贄。アンリ・ダラミツが望んだ形があの魔眼の邪神の形を決めた。そう考える方が理に適って居ますか。

 そう俺が考えた瞬間、更に、展開する事態。
 この地に溢れる炎の精霊たちを中心に、すべての精霊が一斉に活性化を始めたのだ。
 但し、これは違う。今、顕われつつある魔眼の邪神は、炎と水の精霊を完全に従える事は出来ません。
 この状況は……。

 次の瞬間。(湖の乙女)が丁度、最後の呪符を起動させた瞬間、以前に、俺を包み込んだ凄まじい炎が世界を満たした。

 そうだ。この場を支配する炎の精霊力の源、火石と、俺の式神たち。シルフとハルファスが支配する風石に籠められた風の精霊が爆発的に呪力を発し始めたのだ。

 あの時と同じように。いや、あの時よりも更に巨大な精霊力を背景に、ゆっくりと……、ゆっくりと花弁を広げて行く聖なる炎。それは、五芒星の形を象り、地上に大輪の桔梗の花を咲かせた。
 そう。すべての邪まなるモノを燃やし尽くして行く炎で有りながら、それ以外のモノを決して傷付ける事のない炎に因る、晴明桔梗印を……。

 そうして……。

 そして、邪神が顕現するに相応しい異常な世界が、再び、本来そうで有るべき世界へと上書きを行われる際の凄まじいばかりの違和感。歪み切った世界が、通常の理の支配する世界へと急速に復帰する際の異常
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