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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第65話 魔眼の邪神
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…。

 まして、大量の生け贄を得られた事により世界の理の上書きがスムーズに行われ、
 明かり取り用に作られた窓から差し込む蒼き月の光が、ここに乗り込んで来た時よりも明白に力を増し、周囲に漂う気が、邪神が召喚されるに相応しい雰囲気へと移行していたのだ。



【ハルファス、シルフ! この場の風の精霊力を出来るだけ掌握して、邪神に与える力を削いでくれ!】

 天井をぶち抜き、狭い艦隊司令の部屋から、一息に蒼き月が支配する世界(戦場)に上昇を行う俺。
 その俺に付き従う活性化した精霊たちが喜びの舞いを始め、
 歓喜の歌を奏で始める。

【我は祈り願う】

 俺が、最初の召喚呪を心の中で唱えると同時に、(湖の乙女)が口訣、導引を結び、最初の呪符を放つ。

 刹那、遙か眼下に広がる森の木々が、ざわざわと不吉なざわめきを発し始めた。
 いや、違う。ざわめくだけではない。見ている目の前で、明らかに森自体が精気を失くして行くのが判る。

 俺の指し示す気が陽の気ならば、この月下に沈む深き森の中に顕現しようとしている存在は明らかに陰。

【時の始まりよりすべてを生み、そして滅ぼす者……】

 再び、同じように、俺が次の召喚呪を唱えるのとほぼ同時に、(湖の乙女)が口訣、導引を結び、呪符を放った。

 しかし……。
 しかし、その程度では、異界化への流れを止める事は叶わない。
 微かに漂う匂いを何と表現すべきか。死臭か。腐敗臭か。それとも、それ以外の何かおぞましい物か……。
 ざわざわと。ざわざわと枯死して行く闇の丘の木々。

 そして、その一瞬一瞬の間に、大きく、強く成って行く異世界の臭気。

【輝く豊穣の女神。万物流転の源にして、闇を照らす最初の女性……】

 三度、放たれる呪符。起動状態と成った呪符が、ハルファスの創り上げた結界を強化して行く。

 但し、世界を塗り変えようとする流れは止まらない。
 そして次の瞬間。大地よりしみ出すかのように現れた黒き何かが、蒼い月の光に包まれた蒼穹にゆっくりと浮かび上がって来る。

【崇拝される者、女神ブリギッドよ。我が召喚に応えよ】

 後、一枚。四枚目の呪符を起動状態へと導く(湖の乙女)

 徐々に、徐々に凝縮して行く黒き闇。あふれ出す異世界の臭気と、世界を塗り潰して行く狂気。
 そして、その黒き闇が凝縮していた蒼穹に()()()が顕われた。

 いや、違う。それは単なる割れ目などではない。

 それは……。

 蒼き月に支配された蒼穹に浮かぶ巨大な紅い瞳。開かれたのは割れ目では無く、巨大な目蓋。そして、その瞳に纏わり付くように蠢く無数の触手たち。
 その触手たちがウネウネと、ウネウネと冒涜的に蠢
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