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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第65話 魔眼の邪神
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な感覚が、俺と、世界を再び包み込んだ。
 そう、新たに呼び出された炎の少女神によって、歪められた因果律が元通りに修復されて行って居るのだ。

 炎が緋色の粉を巻き上げて、世界を焦がし続ける。
 視界を埋め尽くす煙。吹き付ける熱風。そして、大地を穢し、見境なくあらゆるモノを呑み込んで行って居た触手に次々と燃え広がって行く聖なる炎。
 そうして、大気に充満する血と臓物の臭いが、おぞましい何かが燃えて行く際に発せられる異臭へと置き換えられる。

 その瞬間、異世界の生命体が発する咆哮が世界を震わせた。
 それは……、そう怒り。そして、生きながら燃やし尽くされようとする痛みに耐えかねた絶叫。
 単に醜いと言う一言で済ます事は出来ない程の狂気と、そして、神と呼ぶに相応しい威厳を伴って、その巨大な瞳に(湖の乙女)と、そして……何時の間に顕われたのか、俺の一歩前に立つ炎の少女神を映す。

 刹那。何かを引き裂くような吐き気を催す不快な物音に続いて、水気を含んだ何かが、大量にばら撒かれる音が聞こえて来た。
 そう。その瞬間に、遙か上空より生け贄とされたガリア両用艦隊乗組員の遺体の断片が、赤い液体と共に撒き散らされていたのだ。

 手が、脚が、内蔵が。そして、更に判別の出来ない何かの部分が驟雨の如く撒き散らされて行く。



 そんな異常な世界の中心。いや、俺の視線の中心に存在していたのは……。

 火石に凝縮された炎の精霊力と、風石に凝縮された風の精霊力を惜しむ事なく使用して顕現した少女神。
 それは、前回の召喚に応えた時とは違う、絶対の神性を帯びた存在。

 陽炎の中にたなびく長い髪の毛。
 全身に炎を纏う姿は正に女神。
 その背中に広げられた天使を思わせる炎の羽根は、雄々しく広がり、
 燃え上がるような輝きを示す瞳に、蒼穹に浮かぶ黒い邪神の姿と、そこから伸ばされる冒涜的な触手を映す。

 その刹那!

 右手で太刀を振るう崇拝される者ブリギッド。その刀身が纏う高密度に凝縮された炎が、正に真昼の太陽の如く輝き、激しく渦を巻く。

 ゆらゆらと揺らめく炎の向こう側で、再び放たれる異次元の絶叫。
 そうだ。俺たちへと伸ばされた触手が、その目的とする俺たちに近付く瞬間に、ブリギッドの炎によって次々と蒸発させて仕舞ったのだ。

 完全に邪神のファースト・アタックを無効化した少女神が、僅かに俺を顧みて、少し不満げに鼻を鳴らした。
 そんなトコロは一切変わっていない、普通の少女そのものの雰囲気。

 そして、彼女の輝ける瞳が何を語り掛けて来たのか、その時には判ったような気がした。

 俺たちが滞空する個所よりも、更に上空より俺とブリギッドを、その紅き瞳で睨め付(ねめつ)ける魔眼の邪神。その神気は凄ま
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