第五章 因果
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とつ。
さあ、翔、だっこしたまま安住の地に連れてってあげる。この狭っくるしい地獄からお前を救ってやったのは母さんだよ。よく覚えておいて、あの世では孝行しておくれよ。ふっふっふ、さあ出発。
この時、「ぎゃっ」という息子の悲鳴を聞いた。母親は慌てて胸に抱いた息子を見た。しかしその輪郭が失われつつある。その中心に必死の形相で自分を見つめる息子の顔があった。その顔さえ曖昧模糊となって消えかけている。母親が叫んだ。
「翔ちゃん、翔ちゃん、どうしたの。ねえ、何処に行くの。何処にも行かないで、お願い。」
すっと胸の感覚が消えた。母親は悲鳴をあげて立ち上がった。辺りをきょろきょろ見回し、そして駆け出した。あちこちをさ迷いながら必死で時間の限り探し回ったが、息子をあの世に連れて行くことは出来なかったのである。
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