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悪の騎士
第七章
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 その中でだ、彼等は話すのだった。
「今も年端もいかない娘が死のうとしていますが」
「その娘もですか」
「イングリット家の者だからこそ」
「ここで、ですか」
「禍根を断つ為だ」
 侯爵家、そして帝国へのそれをだというのだ。
「こうしてな、後はだ」
「後は?」
「後はといいますと」
「イングリット家の中に今あの館にいない者もいるな」
「はい、何人かはこの国の都にいます」
「それと大使になっている者もいます」
「そこにも刺客を送れ」
 そしてだというのだ。
「いいな」
「そしてやはりですか」
「幼子も使用人も」
「無論だ、全てだ」
 殺せというのだ。
「皆消せ、こうしてな」
「そうですか」
「それでは」
 こうしてだった、彼等はすぐに燃え盛る館を後にした、その呻き声を聞き流しながら。
 王宮に務めていた者達の館も燃やした、そして。
 その他にもだった、彼等は。
 イングリット家の者達を殺して回った、使用人も一人残さず。
 魔族の国はこのことに大騒ぎになった、だがその騒ぎをかえって隠れ蓑にしてだった。
 ハイネルは部下達を連れて国を出た、その迅速かつ徹底した行動により彼等は疑われることなく脱出に成功した、しかしだった。
 帝国及び侯爵領ではハイネルのことに顔を曇らせて話が行われた。
「やり過ぎではないのか」
「そうですな、女子供まで殺すとは」
「武器を持たぬ者まで」
「それは」
 幾ら何でもだというのだ。
「拷問のことといい」
「森のことといい」
「あの者、やり方が酷過ぎますぞ」
「例え魔族が相手だとしても」
 そしてそれは、というのだ。
「あれではどちらが悪いかわかりませぬ」
「全くですな、拷問で白状した者も殺しましたし」
 そうして始末したのである。
「酷過ぎます」
「冷酷ですな」
「目的の為には手段を選ばないとは」
「そして何の容赦もしないとは」
「ハイネル卿、好きになれませんな」
「全くです」
 こう言うのだった、誰もが。
 彼の直属の部下達も彼を避ける様になり陰口を言う様になった、彼の評価は有能であるが極めて冷酷で残虐なものというものになった。
 悪だという評価も多かった、誰も彼を好かず信頼しない様になった。
 その彼にだ、ある日侯爵は自身の部屋に呼びそのうえで問うた。
「聞いていると思うが」
「私の評判ですね」
「卿の評判は悪い」
 侯爵はあえて彼にこのことを告げた。
「正直に言うとな」
「最悪ですね」
「悪辣とさえ言う者もいる」
 そこまで言う者も実際にいた。
「目的の為には手段を選ばないとな」
「そうですね」
 ハイネルは侯爵の言葉を淡々と聞いていた。
「私自身そうした話は聞いています」
「だが卿は平気なのか」
 侯爵
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