第四章
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「すぐにな」
「あの、それは何故でしょうか」
「理由を言うつもりはない」
長にもその理由は言わない。
「メイドがいるのならだ」
「貴方にお引渡しせよというのですね」
「捕まえてだ、いいな」
「はい、ですが」
「何だ?」
「あの、何故軍勢をこの町まで」
これまでそんなことはなかった、彼等はお互いに長い間友好関係だったからだ、それがどうして軍を連れてだというのだ。
「我々は貴方達の友人の筈ですが」
「それはその通りだ」
このことはハイネルも認めた、そうだと。
「我々はな」
「それならどうして」
「知れたことだ、メイドとだ」
それに加えてだというのだ。
「メイドと結託している北の魔族の者もここに来ているな」
「北の?」
「そうだ、いるな」
「まさかそれは」
長はダークエルフ特有の緑の目をここで顰めさせた。黒い肌と銀色の髪と髭もここで動いた、そして尖った耳を触ってからハイネルに答えた。
「黒エルフの」
「いるか」
「先日からこの町に行き来している商人ですが」
「どういった商人だ」
「やや言葉に北の訛りがあります」
「そうか」
「まさかあの者が」
「可能性があるな、ではだ」
ハイネルはそこまで聞いてあらためて長に言った。
「その商人も出してもらおう」
「あの、ですが」
長は戸惑いを隠せない顔でハイネルに言った、今彼等は町の中央にいてそこで二つに分かれている。片方にはハイネルと人間の軍勢がいる、そしてもう片方には長とダークエルフの者達がいる。完全に二つに分かれている。
その中でだ、長は彼に言ったのだ。
「エルフの掟では」
「同じエルフならばだな」
「他の種族にお渡しできません」
「その者が罪を犯していない限りは」
「そうです」
この掟を出すのだった、彼等の。
「ですから今も」
「その掟は知っている、だがだ」
それでもだとだ、ハイネルは長に淡々とした口調で返した。
「渡してもらおう、その者は罪を犯しているからな」
「その証拠は」
「これからわかるかも知れない」
言葉は仮定形だった、断定ではなかった。
「これからな」
「それでお渡しせよとは」
「渡してくれたなら礼はする」
ハイネルはここで右手を挙げた、するとだった。
兵達が車を出して来た、その台車にダークエルフ達が愛するエメラルドや銀が積まれていた。
そのエメラルドや銀を指差してだ、長と他のダークエルフ達に言った。
「これを渡そう」
「エメラルド、それに銀ですか」
「遠慮なく受け取ってくれ、だがだ」
「こちらが引き渡さない場合は、ですか」
「わかると思う」
今度は何も指ささない、既に後ろにあるからだ。
「森の外にもいる、若し何かがあればだ」
「そうですか」
「わかったな
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