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ロシアの展覧会
第二章
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「それこそね」
「じゃあそういうの撮るのね」
「ああ、そんなステレオタイプじゃなくてな」
 様々なロシア人の顔を撮りたい、これがボロドフスキーの撮りたいものだった。
「色々撮りたいな」
「じゃあ今回の写真集は」
「ロシア人自体を撮るよ」
 妻に確かな顔で告げた。
「モスクワだけじゃ寂しいか」
「他の町にも行くのね」
「村にもな、撮るからな」
「大仕事になりそうね」
 笑顔で言う妻だった。
「ロシア中を巡るとなると」
「広いからな、ロシアは」 
 国土の広さでは文句なく世界一である、ソビエト時代と比べるとかなり狭くなったがそれでも世界一の国土の広さを誇ったままだ。
「シベリアもあるからな」
「東の方もね」
「そこも行くか」
 こう言ってそうしてだった、二人は早速仕事をはじめた。
 手始めにモスクワの町に出る、雪の町に出ると。 
 雪の中で子供達が笑顔で遊んでいる、ついでに言えばその横でおっさんが赤くなっている顔で水筒の中のウォッカを歩いている。
 その姿をだ、ボロドフスキーは素早く撮影して妻に言った。
「まずはこれだよ」
「子供達とおじさんね」
「ロシアには子供だっているんだよ、雪の中でも明るく遊んでいるな」
「ついでにおっさんもね」
 飲んでいるおっさんもである。
「いるからね」
「両方撮ったよ」
 一枚の写真の中に入れたというのだ。
「いいタイミングだったよ」
「そうね、それとよ」
「それと?」
「ほら、あそこ」
 妻はある場所を手で指し示した、そこでは。
 ロシアの女の子達が楽しく談笑している、その風景を夫に見せたのだ。
「いつものアイドルじゃないけれどね」
「それでも綺麗だな」
「そうよ、あの娘達もロシア人よ」
「そうだな、じゃあ撮るか」
「今のあの娘達をね」
「よし」
 実際にその女の子達も撮影した、すぐにだった。
 今度は太った身体に厚着をしたお婆さん達を見た、お婆さん達は彼等の子供達に穏やかな笑顔で何かを教えている。
 そのお婆さん達も撮る、ボロドフスキーはここからこうも言った。
「お婆さんもなんだよな」
「ロシアよね」
「ロシアはお婆さんがいないとな」
 ロシアではないとまで言う。
「それはロシア人はわかってるんだけれどな」
「他の国ではね」
「そうだよ、まあロシア人が見てもいいものだしな」
 だからだというのだ。
「これも撮ってな」
「いい写真になりそうね」
「俺が撮るだけじゃないからな」
 自分の写真の腕も自慢する、だがそれだけではなかった。
「被写体がいいからな」
「ええ、何か凄い一杯撮れそうね」
「後はね」
「後は?」
「あの人達もだよ」
 モスクワを見回っている衛兵達だ、独特の行進で歩いている。
「撮ろうか」
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