十一話
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「ハーレイ、いるか?」
アントーク家の屋敷からさほど遠くない街中。通りに面した横道に入ってすぐにある工房の入口に入ってすぐ、ニーナは幼馴染の名を呼んだ
その声をだしてから少し経ち、隣の部屋に通じているだろうドアが開き汚れた作業着を纏ったニーナと同い年くらいの少年が出てくる
「あれ、どうしたのニーナ? 何か用?」
「ああ、こいつがなんでも新しい錬金鋼が欲しいらしくてな。連れてきた」
「ああ、その子? 誰?」
「私の教導役だ」
「……嘘でしょ?」
「いや、本当だ。手合わせをしたが、負けてしまった」
「へえー。すごいもんだねぇ」
そう呟き、その少年がレイフォンの前に歩いてくる
「僕はハーレイ・サットンだ。よろしく」
「レイフォン・アルセイフです」
出された手を取り、握手を交わす
その際、ふとオイルの匂いが漂ってくる
「ハーレイ。その汚れにこの臭い、お前何していたんだ?」
「さっきまで機材の整理とかしていたんだよ。いやー、いい仕事した」
ニーナの問いに良い顔をしながらハーレイが答える
腰元で結ばれた上下一体の作業着に、その下に着られている半袖の黒いTシャツ。所々汚れて年季が入った皮手袋に僅かに体に浮かぶ汗が先ほどまでの労働を物語っている
「で、ニーナも調整していく?」
「いや、特に問題はない。私はこれで帰って体を休ませる」
「そう?」
「ああ。じゃあなハーレイ、レイフォン」
そういい、帰って行こうとするニーナの後ろ姿にレイフォンは言い忘れていたことを思い出す
「あ、ニーナさん。ちょっと待ってください」
「? なんだ?」
「すみません。ちょっと言い忘れていたことが」
止まっていたニーナのもとに行き、伝え忘れていた言葉を告げる
“体を休ませる”。その言葉が思い出すきっかけになった
「剄息の乱れは分かりましたか? 最後の方、大変そうでしたけど」
「ん? ああ、それがどうかしたのか?」
「疲れをごまかすために活剄を使えば、乱れが出ます。呼吸が乱れるのと同じです。最初から剄息を使っていれば、剄脈も常にある程度以上の剄を発生させて疲れが取れやすくなります。剄脈の鍛え方は肺活量と違い、最終的には活剄や衝剄を使わないように剄息のまま日常生活を送るのが理想です」
「日常的に? そんなこと出来るのか?」
「いつも剄息を続けて生活するのは大変ですけど、出来るようになれば剄の量も、感度も上がります」
「なるほど。やってみる」
「ええ。普通の人間とは呼吸の仕方が、意味が違います。血よりも剄を意識してください。肉ではなく、思考する剄という名の気体だと思ってください。まず、自分が人間であるという意識を捨ててください」
聞いているニーナの目がやや
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