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王道を走れば:幻想にて
第四章、その8の1:示す道
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 すっかりと色付いた紅葉が凩によってひうと飛ばされ、真上より注ぐ陽光を受けて模様を鮮やかなものとさせている。葉脈は色褪せ葉はかさついており、火を点ければあっという間に燻り、そして直ぐに灰色の煙を立ち上らせるだろう。しかし北嶺という環境を考えれば空気は乾燥しているのは当たり前だし、火事が起きやすいのは当たり前だ。余り物同士を頻繁に擦らせるのは得策とは言えないだろう。

「・・・ここが、賊が襲ってきたっていう例の場所か」
「ああ。すまんな、解放するのが遅かったばかりに」
「そいつは関係ないさ。イル=フードが信用してくれようがしまいが、どの道こうなる定めにあったってだけだ。・・・子供が亡くなったってのは、流石にキツイけどよ」

 森から俄かに外れた場所にある黒焦げとなった一棟の廃墟を前にして、一人の人間の兵士が凛々しく敬礼を捧げた。雀斑のある特徴的な男、パックは無念そうに顔を引き締めており、傍に立つがたいのよい垂れ眉の男、ユミルは彼に同調するように黙祷を捧げていた。
 兵士の誤解より生じる拘禁を受けていたパックは捕縛される寸前に一つの情報を齎していた。すなわち盗賊襲来。これを受けた調停団は必死にイル=フードに説明したのだが、信用されたのは盗賊が実際に襲来したという事実を聞いてからの事であった。解放されたパックはこれを聞き、説得にあたっていたユミルと共にこの廃墟へと赴き、自らの努力不足を恥じているようであった。

「悲惨だったってさっき道中で言ったよな?盗賊共に包囲されて家に火を点けられ・・・そして」
「炎の熱に耐えられなくなって出てきたのを斬捨てる。そして物資も奪わずに逃走。ただ殺しを愉しむ事だけを目的とした襲撃は、まさに蛮族のする事だ。頭は重たい飾り物でしかないらしい」
「同じ人間として悲しいよ。そんなひでぇ事をする奴がいるなんてな」

 パックは憎々しげにそう言うが無理もない事である。盗賊によって樵として生活していた一家が惨殺されてしまったのだ。犠牲者の中には幼児もおり、魔獣討伐として西へ派遣されている父親を家で待っていたという。どんな状況であれもっと盗賊の危険性を積極的に主張すべきだったとパックとユミルは後悔し、そして同時に盗賊らに対する復讐の炎を胸に宿していた。復讐ほど正当性のある殺意は存在しないのだ。

「去り際、奴らの一人が文字を彫った木の板を落としていった。『食料を出せ。また襲う』と書かれていたそうだ」「成程。襲われたくなければ大人しく物資を差し出せと」
「差し出した所で調子に乗ってくるだろうな。もっと多く出せと」「となると、対抗策は血生臭くなるんだな?・・・この件は勿論エルフの上層部も理解しているんだろ?話はどこまで進んでいるんだ?」
「お前の情報を下に斥候を派遣して、盗賊団の大まかな戦力は把握している。敵
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